不動がいち、に、と指折り数を数える。時折中空に視線を漂わせまた思い出したようにまたご、ろく、と指を折る。きゅう、じゅう、じゅういち………。
「……」
「どうした? 何が12なんだ?」
 不動は手のひらを閉じたり開いたりしながらまたもぼんやりと中空に視線を漂わせた。不動は合計12回指を折った。たっぷり間を置いてから、こちらを向くことなく不動がポツリポツリ呟く。
「そろそろさあ、12ヶ月なんだよな」
「なにがだ?」
「言わせんなよばーか」
 不動が顔をしかめてそっぽを向いてしまう。その反応でなんとなく意図するものが読み取れた。
「ああ、付き合い始めてからか」
「そーだよ。知ってた?」
「知ってるというか、ちゃんと覚えてるぞ。正確にはあと一週間と2日だ」
「んなこと聞いてねえよ」
 不動が体制を戻してこちらに向き直った。
「1年って、はえーのな」
「そうだな」
「まだ昨日付き合い始めたような気がするのに」
「それは早すぎないか」
 不動は気持ち俯き、おれと会話をしながらもどこか上の空だ。
「さっきから落ち着きないな。どうしたんだ、いったい」
「もう12ヶ月か」
「……聞いてるのか?」
 顔を覗き込むとしばらくして不動の視線がこちらを向いた。ばちりと目が合う。
「不動?」
「あ? なぁんでもねぇよ」
「そうか」
「……ただ、」
「ん?」
「後、何ヶ月くらい一緒にいられるのかな、なんて」
 へへっと、不動が少し眉尻を下げて笑った。初めて見る切ない笑顔だった。ちくりと胸が痛む。普段強気な不動にこの表情をさせてるのは誰だ。紛れもないおれだ。
「まー、そんなんどうでもい、うわっ……、鬼道?」
 感情のままに不動を抱きしめる。驚いたのか、最初不動は固まっていたが、しばらくすると不動の腕が優しく、まるで子供をあやすようにおれの背中を撫で始めた。
「……鬼道くんはまだまだお子さまだもんね」
 不動はそう呟いたきり口を閉じてしまった。自分より変に大人びた不動がやけに遠く見えて、おれは抱きしめる力を強めた。


魔法使いじゃなくても見える未来がありまして、

 2012/01/14


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