あれ、源田じゃないかと聞き慣れた声に名を呼ばれ振り向けば、ごった返す人混みの向こうに寒さ故かマフラーやらコートやらで着膨れた円堂の姿があった。
「あ、やっぱり源田だ!!」
 鼻の頭を赤くして嬉しそうに目を輝かせながら円堂がこちらに駆けてくる。おれも人混みを掻き分けて、他よりも人数の少ない太い杉の木のわきに行けば、ほぼ同時にたどり着いた円堂が白い息を吐きながら口を開いた。
「源田も来てたんだな!!」
「あぁ、帝国のメンバーでな。円堂は誰と来たんだ?」
「おれ? おれは父ちゃんと母ちゃんで」
「そうか」
「おう。今は2人で甘酒買いに行っちゃったけど。……あ、そういえば帝国の他のメンバーは?」
 聞かれて、思わず頬が緩んだ。
「若干名はぐれてしまってな。今は各自捜索中だ」
「へえ、そんなこともあるんだな。あ、じゃあ、今は源田1人?」
 そうなるな、と答えると円堂が嬉しそうに笑った。みんなやはぐれた佐久間達には悪いけど、こういうのもいいなと思った。
「まさか源田に会えるなんてなぁ、いい一年の締めくくりになったなー」
「この間も会ったばかりだろう」
「そうだけどさ、やっぱり今年最後の日に会うの、なんか、特別な気がしてさ」
 ちょっと照れくさそうにはにかまれて、つられてつい微笑む。そうだなと返せば、そうだろと返ってくる。円堂はとてもとても幸せそうだった。お互いの都合上長い間一緒にいることなとできない分、会えるときはできる限り幸せを分け合う。そんな穏やかな関係でおれと円堂は繋がっていた。そんな、ここ一年間のことをぼんやりと思い返していて、ふと我に返って円堂を見たらバッチリと目があった。驚いてどうしたと聞くとなんでもないと返される。じゃあなんでそんなに凝視してるんだろうと思った途端、辺りのざわめきが一層大きくなる。あ、と思った時には既に円堂に先を越されていた。
「あけましておめでとう。源田」
「も、もう明けたか」
「ああ今明けたよ。ほら、源田も言って」
「あ、あけましておめでとう」
 また、円堂は嬉しそうに笑った。
「源田に、一番最初に言いたかったんだ」
「そう、か」
「ああ、じゃあ、母ちゃん待ってるから、またな!!」
「お、おう」
 最後まで手を振りながら円堂が人混みに消えていった。それを見届けた後もなお、おれは人混みをぼんやりと見つめていた。
 今年はいい年になりそうだ。きっとなるだろう。寒い風が吹いてはいるが心が軽い。気がつくと向こうで佐久間が呼んでいた。








あけましておめでとうございます。円源の日です。


新しい一年が君にとって幸せなものでありますように

 2012/01/01


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