「お前はいつか、どっかの女と結婚するだろうな」
 鬼道の、ネクタイを緩める仕草がピタリと止まった。
「それでさぁ、おれと別れて、その女とニコニコ毎日暮らしてさぁ、子供ができたとして、その子が母親似だったとして、お前はまた、その子供を愛するわけだ。おれはその頃どっか汚ねえとこでぼそぼそ働いてさ、結婚とかしないで、その日の食うもんもギリギリな生活してさ、ああ今頃鬼道なにしてんだろって雲の上みたいに遠いお前を思い描いてさ、フラフラ死んだように生きるわけだ。そしてさ、神様のイタズラでさ、たまたま、超偶然、道端でおれ達ばったり出会うんだよ。鬼道は家族連れで護衛付き。おれは泥だらけすすだらけの服着てさ。お前の奥さんとか子供とかがあらイヤね汚いっておれを見たとして、それに合わせて鬼道もそそくさと立ち去ろうとしても、おれは意地悪く微笑んで軽く会釈してやるよ。そんで可愛い子じゃんって笑いながらお前の大切な子供の頭撫でてやるよ。なあおれ性格悪い?」
 鬼道くんは黙っておれを抱き締める。お前は優しすぎるんだと呟いた。


君が僕を愛していたらの話だ

 2012/02/12


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