このままで。

Always been this way.

ヒーローの背中(仗助、鈴美)

ふと思い付いた組み合わせです。
仗助は鈴美さんに自分のお祖父さんを重ねてるのかな。と思って。
超短文です。

***

日の傾き始めた帰り道。
仗助の足は、赤いポストの前で止まった。

「どもっス、鈴美さん」
「あ、仗助君。こんにちは。もうこんばんはかな?」

いつもと同じ、あどけない微笑みを浮かべる少女。
杉本鈴美だ。

「何かご用かな?」
「ちこっとだけ…話したいことがあって」

らしくもなく、視線が落ちたままで仗助は話し出した。



「…それで、怒られたのね」
「そうッス。承太郎さんがあんなに怒るなんて珍しいッスよ」
「傷付いて欲しくないのよ。仗助くんに無理をさせたくないんだわ、きっと。」

歩み寄る彼女は、澄んだ瞳を細めて笑みをこぼす。
包まれているような温かさを感じられる。

「俺、弱いんスよ、だから、ああでもしないと、あの人の助けになれないんじゃないかって」
「自己犠牲も優しさよ。でも、悲しむ人がいること、忘れちゃだめ」
「…」

背中をさする手は、体温を持たずとも温もりに満ちていた。
人を助けた手だ。守った手だ。

彼もまた、同じだった。
甦る記憶の中で、幼い自分はその腕の中に収まっていた。
強くて、優しくて、温かい。
安心出来た。
そんなヒーローが祖父だった。
最期にその手を取った時。
追い付いていたのは、握って分かった手の大きさだけ。

「…オレは、鈴美さんやオレのジジイみたいに誰かを守れてないッス。だからオレも、あのジジイみたいに、みんなを守りたいッス」
「…仗助君」

この人のように、優しくなれたら。
そして叶うなら、あの大きな背中に追い付けたら。

***

鈴美さんは間違いなく杜王町のヒーローの一人。
4部は、誰かの心の穴を他の誰かが埋めていく人間関係があると思います。仗助が優しいのは彼を取り巻く優しさがあった証ですよね。

2014/07/06


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