このままで。

Always been this way.

週明け、雪、聖夜(花承)

メリークリスマス花承。

***

ようやく辿り着いた玄関に飛び込んだ。
指先の感覚を奪っていた風は、扉を閉めてようやく遮断できた。
頭も肩も白く染まって、緑地の学ランが綿を飾ったツリーのような。
そんな愉快な気分でもなく、はあ、とだるそうに花京院は雪を払った。
(足の先まで冷たいよ…)
久々の大雪。
世間一般には、待ち望んだホワイトクリスマスで喜ばれているようだ。
が、まるで歓迎しない身としては大迷惑だ。
手に持ったケーキの入った袋の雪を落としきるのと同時で、部屋から承太郎が姿を現した。

「…随分降ってたんだな。ほれ、タオル使っとけ」
「ありがとう。ここまでとは思わなかったよ…」

手渡されたタオルで、髪を伝う水気を拭き取る。
冷たさは痛い。
一人町を歩く今日は、余計に寒さが身に染みた。
道行く人たちはカップルや友達らしいグループばかり。
寒さなど、感じていないかのように、彼らは笑っていた。
(本当なら、僕も一人で過ごさなかったはずなのに)
二人の都合が合わなかった24日。
会えるのは、今日の夜。
一日中考えていたことは、早く帰りたい、それだけ。

「…どうかしたか?」
「ううん。玄関だとまだ寒くてね」
「ならさっさと部屋に入るぞ」

花京院が手に持っていた袋を取り上げ、承太郎が先に部屋へと向かう。
少し遅れて玄関を後にした花京院は、追い付くと同時に後ろから承太郎に抱き着いた。

「うおっ」

ぽすっ。
広い背中に顔を埋める。
まだ冷たかった頬が、温められていく。

「早く君に会いたかったんだ。こうしてると落ち着くし」

我慢の限界だ。
君と過ごせなかった時間の反動が、分かりやすすぎるほどに表れている。
突っぱねる素振りを承太郎が見せることもなかったので、しばらく花京院はそのままでいた。
この温もりに代わる物なんて、考え付かない。

「…疲れてんのか?」
「そりゃあね。今日って平日だよ?」
「…それもそうだな」

どこかくたびれていても、今こうして一緒の時間を過ごすのはなんら苦ではない。
会えない時間は惜しまず彼のことを考えてはいるが。
わかっているのは、今日という日ではなく、彼と一緒にいられる時間が、花京院にとっては特別だということ。


「ねえ承太郎、なんか歌ってよ。クリスマスソング」
「…聖夜は静かにするもんだろ」
「前に約束しただろう?聞かせてくれるって」
「…大サービスで一曲、な」

大切な、君とだけの特別な夜。
部屋を包み込んでいた暖色の蛍光灯の明かりが、外の雪も柔らかに染め上げていた。

***

花京院生存パロ、のような感じに。
承太郎は英語の発音完璧にクリスマスソングを歌ってくれると信じています。
花京院の赤髪と緑の学ランはほんとクリスマスカラーですね。
滑り込みメリークリスマス!

2012/12/25


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