君の鼓動しか聞こえない(花承)
タイトルはツイッターの診断まんまです。
花承において『I love you』を訳すと、ってやつだったんですがもう泣きました。
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こちらを見つめ手を広げる承太郎を抱き締めた。
彼の方が背が高いものだから、僕の耳は彼の心臓の鼓動を聞き取れる。
ゆっくりと、穏やかなリズムが心地よくて、甘えるようにすりよった。
「くすぐってえ」
どうやら首筋に触れる前髪のことを言っているらしい。
気にせずまた胸元へ耳を寄せる。
離れると思っていたのか、承太郎が少し戸惑う表情を見せた。
「花京院?」
「ごめん、もう少し」
彼の背中に回した手が震えていた。
こうして形を持って存在している。
今確かに触れている。
なのに、不安になる。
「承太郎…」
「どうした」
「…死なないで」
耳元でまた、どくんと生命が謳歌される。
ここで確かに僕は彼と生きているのだと思える。
同時に、この音が止むときが恐くなる。
ずっと、このままであってほしいと、願いたくなる。
「…そりゃあ無理だ。いつかは死ぬからな」
「うん。でも、今は生きてる。君も、僕も。そうだよね?」
「当たり前だ」
承太郎もまたきつく抱き締め返した。
いっそこのまま、時が止まればいいと思った。
ふう、と花京院が息をつく。
どこか苦し気に、笑顔を作りながら。
「…君が生きていることが、僕の存在の証のように思えてね」
「なら、俺も同じだ」
君への依存が止まらない。
自分も頼られたいが、どこかで依存して欲しくないと思ったのは、あとで何も残さず消えることを直感的に予測したからなのかもしれない。
大きな手で、背中を優しくさすられた。
「大丈夫、だ」
語りかけてくれた言葉で心が安らぐ。
うん、と小さく返事をすると、
「…心配しなくても、一緒だ。ずっとな」
ちくりと痛くて、でもふわりと暖かくて。
少し駆け足になった拍動が、気持ち良いと思った。
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どうして純粋に幸せな話を書けないのか。花承悲恋マジックなんですかそうなんですか。