このままで。

Always been this way.

夏煙(花承)

タイトルの造語のセンスの無さ…。ですが正直、これ以外だとすっきりしないんですよ。
帰省した時の花火大会でふと考え付いてしんみりしてしまったのです。

***

満天の星空に、いくつもの大輪が咲いた。
様々な色彩で空を染め上げ、きらきらと光を放って消えていく。
淡々と瞬く星よりも、ずっと華やかだ。
音と光が止むと、後に残った煙が風に流されていく。
後からまた幾度も夜空を彩っては、次々に跡形もなくなっていった。
そう。花火は、一瞬だからこそ美しい。

□■□■

線香を上げて、静かに手を合わせる。
今年は仕事が忙しく、彼の命日に日本に戻ることが出来なかった。
立秋を過ぎた盆の夕方、これが今年初めての墓参りだ。
「…待たせたな」
承太郎は刻まれた名前にそう呟く。
残暑とはいえぐったりするような蒸し暑さ。
そんな中、水を入れ替えて活けた花はそれに負けんとばかりに咲き誇る。
思わず彼の姿を思い浮かべた。

煙草をやめてどのくらい経つだろう。
ふとそんなことを考えた。
立ち上る細い煙は、今ではこの場所でしか見ていない気がする。
そしてこうも思う。
あと何度、ここで線香の火が消えゆくのを見届けるのだろうかと。
墓前に供えられている花は、次々に入れ替えられる。
線香立てには、また新たに灰が溜まっていく。
幾度も繰り返すことだ。
自分が死ぬまで。
「…それまで、忘れたりしねえ」
横風にコートが靡く。
半分ほどになった線香の灰が、また落ちた。

□■□■

花火大会が今日だったことは知る由も無かった。
帰り道を人が遮るものだから、早く家に戻るのを諦め花火を見ることにした。
オープニングを飾るスターマインの後、風が無いためかぽつりぽつりと煙が残る。
その他には、変わらず小さな輝きがある。
次々に花火が上がっていくと、徐々に風が吹き出し、あっという間に粒子を闇に溶かした。
夕闇に混ざっていった、線香の煙のように。

すっかり澄んだ黒い背景に、星がどこか寂しげに輝く。
まるで、ほんの数時間を空で共に過ごした花火を恋しがるように。

***

ベタですが…やっぱ夏と花承のタッグは強力。
これで墓参りと花火大会と花京院の誕生日被ったらどうしますよ。承太郎には重いですよね。
花火の後の空に残る煙って、メッセージ性を感じてすごく好きです。半永久的に変わらない星空に遺すメッセージ…うわあああなんで花承って救われないんですか!
そんな儚げなところも含めてやっぱり花承は良い。

2012/08/20


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