このままで。

Always been this way.

手が届く先に(花→←承)

昨日のリアタイより
ステレオポニーの「ヒトヒラのハナビラ」っぽく解釈した、花京院の最期
死ネタです
あと捏造多々なので注意

***

(…もう…動けない)

ふわりと、頬を夜風が撫でる。
冷たくて硬質で、どこかもの悲しい。
水面を漂うひとひらの花弁のように、遠くへと消えていく、自分の命を感じる。
視界には仲間の姿はない。
時計塔の針を撃ち抜いたメッセージは、ジョセフに届いただろうか。
ポルナレフは、承太郎と合流出来ただろうか。

(承太郎…)

死の間際であることを体が分かっているせいなのか。
ふと頭をよぎったのは、彼のこと。



その時花京院は、承太郎を一心に見つめていた。

「…、おい、大丈夫か花京院」
「…あ、ごめん。大丈夫だよ、」

DIOの部下たちの襲撃に備え会議を行う、ホテルのジョセフの部屋。
話の内容はうろ覚えだった。

「疲れてるなら早く寝ろよー」
「ポルナレフの言う通りじゃ。決戦は近いだろう、無理はするな」
「じゃあ、お言葉に甘えて。先に部屋に行ってますね」

DIOに近付いていることを仲間たちは分かっていた。
今この時すら緊張の色が隠せていない、そんな時に。
一体、僕はどうしたって言うんだ。
部屋に戻り、そのままベッドに倒れ込んだ。

僕は、承太郎のことが好きだ。
それはきっと旅においては邪魔なものになるのだと思った。
この想いが承太郎を傷付けることになりかねないし、何よりDIOを倒すことを目的としたこの旅には必要なかった。
諦めることはしなかったが、せめてこの戦いが終わるまでは言うまいと決めた。
狭い車で肩がぶつかる時も。
食事のテーブルで、向かいに座る彼を見る時も。
寝付けなくて、隣で眠る彼を見る時も。
それだけで、十分だった。
自然と笑みがこぼれるほどに。

今になって、どうしようもなく、承太郎がいとおしい。
次第に抑えられなくなる感情に、気付かないふりはできなかった。
今しか、伝えるチャンスが与えられていないような。
自分の気持ちを伝えられないままに終わりを迎えようとしているような。
まるで敗北を予感しているかのような、自分の考えに怯えた。
それでもその手前、プライドか理性か、想いを伝えるのだけは止めていた。
物思いに耽っていたところで、扉をノックする音。

「花京院、入るぞ」

僕の名を呼ぶ、その声。

「うん」

扉から覗く、逆光のせいか深緑を携えた瞳。
そういえば、部屋の灯りを点けていなかった。

「じじいたちが、お前の様子を見て来いってうるさかったんでな。…で、大丈夫なのか?」
「うん、やっぱり、疲れてたんだと思う」
「…そうか。なら、そのまま早く寝ちまいな」

気のせいか、承太郎の表情が和らいだように見えた。
それに花京院が気付いたのと同じタイミングで、承太郎は部屋を出ようとする。

「あ…ちょっと…」
「…?」

承太郎が足を止める。

待って、部屋が暗くて、君の顔がよく見えないんだ。
それに、もう少し話そうよ、そうしたら、聞いてほしいんだ。
僕は、君が、…。

心の中で叫んだだけで、そこから出てくることは無かった。

「…ごめん、なんでもない。先に寝るよ」
「無理はするなよ。…おやすみ」

最後に掛けてくれた言葉は、すごく、温かかった。
同時に、承太郎が、とても遠いように感じた。
それが、わけもなく悲しかった。



意識は今に引き戻される。
体はもう冷えきっている。
命のせせらぎが、終焉を迎えようとしている。

承太郎…君に、会いたい。

「…京院!」

…承太郎…?

「花京院!」

…良かった、最後に、君の声が聞けた。
こっちに近付いてるのかな。
もう、視界は霞んでいる。


嘘だろ、花京院。
見えてるだろ、お前のとこに向かっているのが。
聞こえてるだろ、お前の名前を叫んでいるのが。
待ってくれ。
あと数歩で、手を伸ばせば、届きそうなところに来てるじゃあねえかよ。
…あと数分早く来ていれば、お前を助けてやれたんじゃねえのか?
答えてくれ、花京院。


違うよ。
これで、正しかったんだ。
…承太郎。
最後くらい、笑顔で別れたいよ。
でも、声に出して伝えられないなあ。
霞む視界の中でもわかる、君の涙を拭わせてほしい。
でも、手を伸ばしても、君の頬まで届かないなあ。

最後まで、言えなかった。
君に、好きだと伝えたかった。

承太郎が花京院の手を掴んだ、その時。
その手に、花京院の涙が落ちた。

***

歌詞を解釈する上で、花京院と承太郎が既に付き合ってると考えることも出来るんですが、あえて片想いで
BL的に解釈しやすい歌詞だと言う友人の意見に納得
※あくまでも個人の意見です
こういう暗めでしかも救われない話って、書くの苦手です
しかし花承ならそれすら書いてしまう私は病気と言われても仕方ない
さすがにここまで暗い花承はもう書きません
幸せで両想いな花承が好きです

2012/02/09


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