このままで。

Always been this way.

酸いも甘いも(花承)

やっぱり定期的に花承書かないとダメなんです
前半ちょっと暗めです

***

きしりと響いたベッドのスプリング。
それが、ホテルの同室で寝ていた、花京院の立てた音だと承太郎はすぐに気付いた。
時刻は、午前1時。
夕食時にはポルナレフたちもいて賑やかなものだったが、今は星明かりが静かに夜を奏でている。

「承太郎…起きてる?」
「…ああ」
「そっち、行っても良い?」

返事をするより早く、花京院はこちらへ歩み寄る。
そして、何も言わず、承太郎のベッドに腰掛けた。
明かりは点けない。
二人とも、それを望んでいないのは沈黙が証拠。
目ではわからないが、さっきより近付いた互いの距離に、承太郎は花京院が自分に何を訴えているのかを感じ取っていた。

「…怒っちゃいねえよ」
「…」
「だが、寝込みを襲うのはもうやめろ」

すでに、花京院は二度手を出していた。
といっても、寝ている承太郎にキスした程度だが。
一度目は、完全に気付かれなかった。
二度目は、唇が触れた直後に承太郎が目を覚ました。
前に泊まったホテルでの出来事だ。
それから3日、野宿か車の中で過ごしている間、二人は必要最低限の言葉しか交わしていなかった。

だから、薄々感じてはいた。
次に二人きりになるとき、おれは花京院に答えなければならないと。

ホテルで全員が個室に割り当てられない時に、二人が同室にされるのはいつものこと。
勿論、拒否する理由など無かった。
しかし、相手の気持ちを知った今、少なからずその状況を避けたい気持ちがあった。
そんな思いとは裏腹に、この時間は来てしまった。
承太郎が体を起こす。

「…花京院」

呼ばれてこちらを見たその目。
罪悪感と、それ以上に抑えられない感情に支配されて、闇に溶け込んでしまいそうな心と同じ色。
その闇すら包みたくて、承太郎は、強く、しかし優しく言った。

「本当の気持ちを、隠さないでほしい。おれは、お前を受け止めてやりたい。お前が望むならな」
「僕は…好きなんだ、君が」
「それはわかってんだよ」
「…?」
「今、お前はどうしたいかの問題だ」

花京院はすぐには答えなかった。
合わせたままだった視線を外し、次の言葉を探す。

(強引に唇まで奪って、それなのに承太郎の優しさに甘えようなんて…)

自分の本心と消えない対立した思いとが、またしばらくの沈黙を作り出した。
承太郎には本心などとっくに知られているのかもしれない。
だが、本当にその想いを伝えて、叶わなかったとき、花京院には自分の心を制御する自信がなかった。
傷付きたくなくて、卑怯な手を使ってしまった。
それをまた、重ねるようなことをしてしまったら…。

「…花京院?」

承太郎は、返ってこない言葉を待ち続ける。
ようやく、おもむろに動き出した花京院の唇。

「…ごめん。まず君には、謝らなくちゃあいけない」
「そうだな、謝罪の言葉は受け取ってなかったからな」
「その上で、もう一度言いたい。君が好きだ。だから…今、君が許してくれるなら、」

花京院は、自身の体を相手の方へと寄せた。
そして、承太郎の下唇を親指でなぞった。
承太郎の表情は、変わらない。

「…こんなこと、許されるわけがないのに」
「何故だ。おれは拒まない。さっきも言っただろう、受け止めてやると」
「良いのかい」
「おれがお前を嫌いじゃない内はな」

最後の、ぶっきらぼうを装った言葉で、承太郎自身が耳を赤くした。
それが、暗い部屋の中、相手に見えないことは救いだった。

「…ふふっ」
「…何がおかしい」
「いや、何でもない。…大好きだ、承太郎」
「…あんまり調子乗るんじゃねえぞ」

近付く花京院の体温を感じて、承太郎は目を閉じた。
三度目の口付けは、互いの熱で溶けるように絡み合って、甘酸っぱかった。

***

結構ガチで書いてしまった
私の中では暇ありゃキスしてそうなイメージの二人です
そこに至るまでには葛藤もあったでしょうよ!
花京院はそんな気がする
案外承太郎の方が悩まず好きって言っちゃうのかも
実は今までちゅーするとこまともに書いたことなかったっていうね!
いろいろ初挑戦で玉砕だよ!

2012/02/07


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