雨模様 | ナノ
第6話
「……」
格好のことを指摘してからゴミ袋はずっと俯いたままだ。もしかしてオレ、こいつの地雷踏んだ?どういう事情があるのか知んねーけどこいつにとってこの格好はそう簡単にやめられるものではないらしい。
「…ごめん」
「なんでお前が謝んの?」
触れられたくない話題は誰にだってある。そこに初対面でズカズカと踏み入った上に余計なアドバイスまでしてしまったのはオレの方だ。
「謝んなきゃなのはこっちだろ」
「…!そ、れはちがう!あなたには、すごく…感謝してて、だから…謝るなんて、……それは違くて…ええと…」
冗談みたいにヘタクソな喋りだけどそれでもオレに何かを伝えようとする様子は真剣で、途中で遮る気にならなかった。
「こ、の恩は…ぜったいに、忘れない」
そいつは深く頭を下げて、たぶん少しだけ笑った。サングラスとマスクで表情はわからないけど周りの空気がほんの少しだけ和らいだような気がする。
「また、どこかで…」
「あ、おう。じゃーな」
決して周りに馴染む格好じゃないのにそいつの姿はあっという間に人混みに紛れて見えなくなった。気配を消すのがめちゃくちゃ上手いんだ。どう見ても戦闘派じゃなさそうだけどハンター試験を受けるだけあってそれなりの実力はあるみたいだ。
「ハンター試験、案外面白そうじゃん」
そういや名前聞きそびれたな。次会ったら聞こ。
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