雨模様 | ナノ
第44話

砂埃が収まり、床に倒れたまま気を失う義父の姿が見える。

「離せよ、ハル」

ハルへのせめてもの情けとして、一瞬で仕留めるつもりだった。

けど蓋を開ければ、ハルは全身でオレを受け止め、義父を殺せないように両手をがっちり掴んでいる。

「殺したら、だめ」

あーやっぱこいつめちゃくちゃつえーわ。気配も完璧に消してたはずなのに楽々と受け止められるんだもんなー。

……で、なに?殺したらだめ?

「無理。ぜってー殺す」

「だめ、殺さないで」

「離せよ」

「嫌だ、キルア、いいから」

ハルは震えながら必死に首を横に振る。こいつ、なんで震えてるんだ…?怖いから?誰が?もしかして……オレ?

その考えに至った瞬間、はっと我に還った。オレ、今こいつの前でどんな顔してた…?

「っ、悪いハル、大丈夫か」

「……きもち…わる…」

「えっ吐きそう?!ちょ、とりあえず外行くぞ!」

気が抜けた瞬間に口を押さえて顔を白くするハル。この場所にこれ以上いたらだめだ。力が抜け自分で立っていることもままならないハルを抱えて外に出た。

適当な木陰に入る。風もよく通るし、ここなら少しは楽になるだろう。

「ハルー、大丈夫か…?」

「ごめん…また迷惑かけた…」

そう言って申し訳なさそうに頭を下げるハルにムッとする。迷惑迷惑って…そういうんじゃないだろ。

「…それ、次から禁止な」

「え?」

「だーかーらー!迷惑とか、んな寂しいこと言うんじゃねーよ!……友達、だろ。困った時は助け合うのがフツーなんだよ!わかったか?!」

一気に言い切ってビシッとハルを指差す。ハルは何を言われているのか理解できなかったのか目を丸くして、幾度か瞬きをした。あーもういちいち可愛いな!

「友達…?」

「そ、友達」

「…うれしい」

ニコニコしているが、まだ恐怖は拭い切れていないのかハルの身体は未だに震えている。くそ、やっぱり殺しとくべきだった。あの野郎、絶対許さねえ。




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