雨模様 | ナノ
第40話

屋敷を出てゴンと他愛のない話をしながら歩く。そんなに時間は経っていないけど長い間会っていないような気がした。

「さっきまでハルがサングラス外してたんだよ」

「マジで?!どういう心境の変化?」

「ゴトーさんとコインゲームしててさ。サングラスがあると見えにくいから」

「あー、なるほどなー」

ゴトーのやつ一体どんな理不尽なゲームをふっかけたんだか。勝敗に関心のないハルが勝つためにやったのだとしたら多分他人のために必要だったのだろう。誰かの命でも賭けたのか?

つーか、普通に羨ましい。オレもハルの顔見たい。最後尾をのんびり歩くハルの顔には別れた頃と同じように不釣り合いなサングラスが掛かっている。

「キルア、ハルのとこ行かなくていいの?まだ一言も話してないでしょ?」

「……あー、やっぱバレてた?」

「キルアって意外とシャイだよね」

「なっっ!ちっげーよ!!」

試験が終わったら家に帰ると言っていたハルが皆と一緒にここに来てくれてすげー嬉しかった。だけど別れ際の表情がチラついて中々声をかける勇気が出ないでいる。傷つけた…と思う。あの時掴んでくれた手を思い切り振り払ってしまったから。

話しかけにくい理由はそれだけで決して久々のハルに照れているわけじゃない。確かにちょっとキラキラ…してない!ゴンに釣られるなオレ!

「ミトさんが言ってたよ?女の子はしっかり捕まえておかないといつの間にか手の届かない所に行ってしまうものだって」

「〜〜〜っ」

そう言ってニッと笑ったゴンに絶句した。たまにこいつがすげー大人に見えるときがある。恋愛関係に対しては特に。

「…ふっ、…そ、そう言うなゴン。ペースは人それぞれだからな」

「ク、クラピカの言う通りだ…っ。ゆっくりやれよキルア。俺たちはお前の、味方…だからな…っ」

「余計なお世話だっつーの!」

クラピカとオッサンが必死に笑いを堪えているのが伝わってくる。つーかなんでいつの間にか皆にバレてんだよ!オレってそんなにわかりやすいのか?!これ以上こいつらの近くに居たくなくて最後尾にいるハルの元に向かった。

「!」

他のやつらとの話が終わるのを待っていたんだろうか。向かってくるオレを見るとハルもこちらに駆けてきた。

「キルア、久…しぶりだ」

嬉しそうにしちゃって、あーくそ、かわいいな。傷ついている様子もなければ怒っている様子もない。ただオレとの再会を純粋に喜んでいるハルにホッとする。

「来てくれてありがとな」

「行く、に決まってる…会えてうれしい」

さらっとした言葉なのに全身から溢れている「オレに会えてうれしいですオーラ」が凄すぎて思わず目を逸らす。勘違いしそうになるからそれやめろ。隠せ、しまえ!

こいつが一番懐いているのは間違いなくオレだしあの時も「大好き」とか言ってたけど何か違うんだよなぁ…

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