雨模様 | ナノ
第35話
辺りを見渡してみるとヒソカはすぐに見つかった。外見的にもオーラ的にも目立つ人で助かった。う、ギタラクルもいる。
問題はこの後だ。ほとんど面識のない他人に自ら声をかけられるほど私のコミュニケーション能力は高くない。
「あ…さっきの」
とりあえずいつもは目立たないために消している気配を少しだけ出してみると、2人は揃ってこちらを向いた。
「ボクに何か用かい?」
「お礼でも言いに来たんじゃないの?」
「助けてくれてありがとう…って?まさか」
いや、そのまさかなんだけど。あのままギタラクルと交戦していたら私は無傷じゃいられなかっただろうし最悪死んでいただろう。
「た、助けてくれ、て…ありがと…」
緊張しすぎてめちゃくちゃ辿々しくなってしまった。数秒の間があいて、不安になってヒソカの顔色を窺うと予想に反してにこにこと笑っていた。
「……」
「…え?本当にそれだけ?」
小さく頷くとヒソカは目をぱちぱちと瞬き「どういたしまして」とクスりと笑った。続きがあると思われていたのだろうか。本当にこれ以外の用件は全くないし、正直二人の空気感が怖いから一刻も早く立ち去りたい。
「キルによろしく」
「………」
ああ、駄目だ。やっぱり怖い。キルアに謝ってほしい。キルアの全てを決めつけるような事、言わないでほしい。そう言いたいのに、この人を見ると義父がちらついて怖くて何も言えなくなってしまう。
「キルは君のこと見殺しにしたのに、よくそれでも一緒にいたいなんて思えるね」
「わ、たし…は、キルアに守って…貰いたいわけじゃ…ない…力になり、たい…」
「ふーん。キルより弱い君に出来ることなんてないと思うけど」
「………」
ギタラクルの言う通りだった。精神的にも肉体的にもキルアに劣る私がキルアの側にいることで出来ることなんて何もないだろう。でも、私はキルアの側にいたいし、何でもいいから力になりたい。
もっともっと強くならないといけない。自分の身を自分で守るのは勿論、キルアのことも守れるぐらい。
「し、つれいします…」
頭を下げてその場を後にした。
「んーもっと心折れるかと思ったけど逆に燃えさせちゃった。失敗失敗」
「良い目してたなぁ…ぞくぞくしたよ」
「それにしてもあの時君が間に入ったのは意外だったな。あんな子に何か守る価値でもあるの?」
「うん。確証はないけど、多分あの子は」
ギタラクルと話して、自分のやりたいことがようやく見えてきた。ハンター証を売って、そのお金だけ置いておけば家には帰らないで済むかもしれない。まずはキルアを迎えに行く。その後もキルアが許してくれるなら側に居させてもらおう。家のことはそれが済んでからだ。
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