日常 | ナノ
76日目(金曜日)

今日は休みをもらったので、宇宙土産を渡すために花ちゃんに連絡を取ってみたら「ちょうどよかった…話したいことが山ほどあるの…」と死にそうな声で言われたので昼ごはんを食べにいった。

どこがいいか尋ねてみたらノータイムで「個室」と返ってきた時点で察してはいたが、大分ストレスがたまっているみたいだった。酒と愚痴が止まらない花ちゃんに「明日仕事は…?」と恐る恐る尋ねると「朝から。帰ったら諸々ケアする。今は昼。何しても許される」とのこと。

誰もが憧れる華やかな職業だけど、その分求められることも多いだろうし苦労することも多いんだろう。「花ちゃん色々抱えてるのにテレビではいつも笑っててすごいよね。花ちゃんにしかできないことだと思う。かっこいい」と言うと「やめてよ」とそっぽを向かれてしまったが、長年の付き合いなので怒っているわけじゃないことはわかる。そのあと「ぐすっ」と鼻をすする音が聞こえてきたのだけど、もしや泣いていたんだろうか。花ちゃんがすぐにトイレに行ってしまったからその辺はよくわからずじまいだった。

愚痴もおさまって来た頃に火星まんじゅうを渡すと花ちゃんはとても驚いた。どうやら私が行ったツアーは一般の人が行けるような価格帯のものではなかったらしい。やたらと豪華だったからおかしいと思ってた。券を貰った経緯などを話すと「は???なんでそんな羨ましいことになってんの???」と少しキレ気味で言われたので「花ちゃんも宇宙興味あったんだ」と返すと「そこじゃねええ!!!」と大声を出された。「億万長者に口説かれてんの!」「え?花ちゃんが?」「オメーーーだよ!人間関係のことになるとほんとポンコツだな!!!」どんどん口が悪くなる花ちゃんにちょっと怯えた。

花ちゃんの推理によると、私は例のお兄さんに口説かれているらしい。ありえない。どうしてそんなことに。「ちょっとその人との出会いから今に至るまで全部話して。詳しく」と詰め寄られたので、頭突きをかましたのでお詫びとしてたこやきを渡したこと、そのお礼に辻斬りから助けてもらったこと…など覚えている範囲で語ると「その人あんたのどこがいいの?」「どこもよくないと思う」「私もそう思う。ペアチケットは金持ちの道楽かもしれない」「私は慈善事業の一種だと思ってる」「それだ。住む世界が違いすぎる」という形で話がまとまった。お兄さんめちゃくちゃいい人なんだよね。

花ちゃんに「宇宙の砂、かき集めてきたんだ」と自慢すると「え?いらなくない?」と真顔で言われてしまった。お兄さんに渡そうか悩んでいたことを告げると「恩を仇で返す気なの?」ともっと真顔になった。私にとっては宝物だから喜んでもらえると思っていたのだけど、他の人はそうでもないんだろうか。

花ちゃんとは意見が合わない時も多いんだけど帰り際に「あんたと話してると意味わかんないこと多すぎて一周回って元気になるんだよね〜ありがと!」と笑ってくれて嬉しかった。テレビで見せる笑顔より幼くてかわいい。花ちゃん毎日本当お疲れさま。私も明日からまた頑張ろう。あと火星まんじゅうの期限がやばいからそろそろお兄さんに出会いたい。出会えますように。




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