日常 | ナノ
37日目(月曜日)

結果から書くと、今日は父の言葉に従って大正解だった。

昼過ぎに境内を掃除していると、一匹のゴキブリが私の前を横切って、ササっと木陰に隠れ、そのままどこかへ飛び去って行った。虫は好きでも嫌いでもないから、「あーもうゴキブリの時期かあ」と呑気に掃き掃除を再開したのだけど、部屋に戻ってテレビをつけた途端に画面にアップに映し出されたあのゴキブリたちには度肝を抜かれた。

そのとき画面に映っていたのは、私たちと同じくらいの大きさをしたゴキブリ。それが大量発生し、屋根やら車やらを破壊している映像だった。これはさすがに怖い。「山奥って大変だね」と隣にいた兄に話しかけると、「バカお前これかぶき町の映像だから」と信じられない答えが返ってきた。かぶき町ってあのかぶき町?バイト先の?正直今でもまだ半信半疑だ。

「お前のバイト先大丈夫?」と兄が半壊した家屋を見ながら尋ねてきたので、昨日バルサンを焚いた旨を伝えた。もし何もせずに出勤していたら、私は今頃このゴキブリたちと……想像したら鳥肌が。

この時ほど父に感謝したことはない。それから私はもう一度境内に赴いて、掃除を始めた。恩返し恩返し。というかかぶき町に住んでいるお客さんたちは大丈夫なのだろうか。神楽ちゃんお妙さん坂田さん新八くんどうかご無事で。事態が落ち着き次第、菓子折りでも持って尋ねてみようと思う。




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