日常 | ナノ
99日目(月曜日)

ここ最近平和にのんびりと過ごしていたんだけど今日は衝撃的なことがあった。雑誌の品出しをしていたら坂田さんが血まみれの男の人を抱えながら歩いている姿が目に入ったのだ。

慌ててお店から飛び出してみたはいいもののどうしていいかわからずもう一度店内に引っ込み、ヘルプで入っていた秋くんに見たことをそのまま伝えると「どう考えても病院沙汰だね」と何やら準備を整えて坂田さんの元に向かっていった。

その様子を何もできずに見ていたのだけどちょうど同じタイミングで出勤してきた中島くんが店の前にできた血溜まりを見て「な、ななな、何事!?夕崎さん、み、店の前に怪我人がっっ」と真っ青になりながら慌てていて、それを見ていたらようやく少しだけ冷静になれた。

秋くんたちを追いかけてできることを聞くと「知り合いの病院まで一緒に行くからその間お店任せていい?」と言われ、うまく言葉が出なかったから代わりに何度も頷いた。「ありがとな」と坂田さんが頭に手を置いてくれたけどその手も傷まみれだし、坂田さんが抱えている男性からはどくどくと血が流れ続けているしで気を抜くと卒倒しそうだった。

お店に戻ると制服に着替えた中島くんが「こ、これ掃除していいのかな?!そ、そんなことしたら証拠隠滅とかでお縄?!」と血溜まりの前であたふたしていてなんだかほっとした。「たぶん平気。一緒に片付けよう」と彼と同じ目線までしゃがんで気がついた。「中島くん、ボタン全部ずれてるよ」「え!うわ、ほんとだ!」うーん、落ち着く。

それにしても秋くんって一体何者?店長の息子でたまーにお店を手伝ってくれる優しいお兄さんって以外の情報が何にもないんだけど、あんな死にそうな人を見ても表情ひとつ変えてなかったし絶対只者じゃない。そのことを中島くんに話すと「もうさ、この街にまともな人間なんていないんだよ。皆んなどこかが何かしらぶっ飛んでるんだよ」と遠い目をしていた。私たちも他の人から見たら常軌を逸した何かがあるのだろうか。

結局、あのあと秋くんは戻ってこなかった。坂田さんも坂田さんに抱えられてた男の人も無事だといいな。寝よう。




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