ごみ箱 | ナノ
今日はタダクニもヨシタケもバイトがあるらしくて先に帰ってしまったから、ヒデノリと二人で帰ることになった。
ヒデノリはどうも最近UFOキャッチャーにハマっているらしくて、獲得した様々な景品の写メを見せてくれた。そんなにすごいならこれは是非お手並みを拝見させて貰おうと思ってゲーセンに向かっていると、突然ヒデノリが立ち止まった。
「なあ…佐原」
「なに?」
「この先って何があったっけ?」
「は?」
「この先って何があったっけ?!」
聞かれてることの意味がいまいちわからなくて聞き返すと、ヒデノリはくわっと目を見開いて全く同じことを倍の声量で繰り返した。
これはどうやら意味を理解できなくても答えなくてはならない質問のようだ。
「河川敷だけど…」
「あ、のさー佐原?俺ちょっと寄りたいとこあるからこっちから行かね?」
「……」
最近ヒデノリの様子がおかしい。河川敷付近を通って帰ろうとすると異常な拒否反応を示すのだ。ヒデノリ的にはさりげないつもりなんだろうけど、他所から見れば避けているのがバレバレだ。
なんというか、こーやって嫌がっている姿を目の当たりにするとつい悪戯心を擽られてしまう。俺は口元に小さく、本当に小さく笑みを浮かべて口を開いた。
「えーなんで?こっちからのがゲーセンに近いじゃん」
「確かにそうだが…ほら、コンビニに、な?コンビニ寄って食糧蓄えとかなきゃだろ?」
「食糧を蓄える?ゲーセン行くのに?要らないと思うけど」
「ナメてんじゃねえぞォォォ!」
「え」
いきなり叫ばれて思わず目を瞬く。なに…どこで?一体今の流れのどこでスイッチ入ったんだ?
「いいか、佐原。これから行くのはゲーセンなんかじゃない。戦場だ」
「は」
ヒデノリは呆気に取られる俺をビシィィと指をさしながら更に言葉を続けた。
「戦場に行くのに、食糧を持ってかないやつは死あるのみ。俺たちが今から行くところは生半可な覚悟で足を踏み入れていいとこじゃないんだよ!」
「俺お前が何を言ってるのかわからない」
「と、いうわけで」
「どういうわけで?」
「コンビニに行くぞ!佐原!」
意味がわからない。わかったことはヒデノリがコンビニに行きたがっているということと、どうしても河川敷を避けて帰りたいということだけだ。
…でも、ごめんなヒデノリ。それだけわかれば十分なんだ。
「うん、いいよ。行こう」
「…よし!じゃあ回れ右」
「待って」
普段は死んでいる目を珍しく輝かせながら回れ右をしたヒデノリの腕をがっしり掴んで微笑んだ。
「この先にも、あるよね?」
「は…?」
「行こうよ。この先のコンビニに」
「……っ、このドSがァァァ!」
うわ…酷。ドSってなにそれ違うんだけど。そこは大変不服だが、結局この先…つまり河川敷の先にあるコンビニに行くことになったわけだから一先ず良しとしよう。
さて、ヒデノリがこんなに嫌がる河川敷には一体何があるんだろうなあ。
いじめっこ
(今日は…風が泣いています)
((まさかの電波少女きた!))
((…助けてヨシタケ))
ヒデノリは弄られるより弄るイメージがあったので、敢えて思いっきり弄ってみました。そろそろ新巻発売なのでまた再熱しそうな予感…
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