アイス(幸村)



家でごろごろしていると、幼なじみの精市がひょっこりやって来た。


「アイスキャンディー作ったんだけど、食べる?」

「食べる食べる!作ったの?精市が?」

「ああ。作ったって言ってもオレンジジュースを凍らしただけだよ」


作ろうって気になることがすごい。
私だったらアイスが食べたくなったらコンビニへ直行だ。

昔から精市は、こういう一手間かけるようなことが好きだったから、彼らしいと言えば彼らしい。


「すごいねコレ!ちゃんと棒が付いてる」

「おまけにアタリ付きだよ。どっちかがアタリ。さ、早く食べてみてよ」

「へー!いただきまーす!」

アタリ付きと言われると、ぜひアタリを引きたくなる。
アイスは2本しかないから、確率は1/2。

一瞬どちらにしようか迷いながら、右のアイスを選んだ。



「んー!おいしい!」
キンキンに冷えたアイスキャンディーは、さっぱりした甘さですごくおいしい。


「よかった。少しだけレモンも絞ってみたんだ」
精市もペロリとアイスを舐めた


「いやーほんとおいしっ……あ!見て精市!『ア』が見えてきたよ!」

夢中で食べていると、アイスキャンディーに刺さっている棒から、『ア』の文字が見えてきた。


「これアタリだよね!よっしゃー!いぇーい!ふぅー!私あったりぃぃい!」

「…中学2年生男子みたいな喜び方をするよね」

「どーゆう意味よ」

とっさのことに、我を忘れて喜びすぎてしまった…
精市の視線が痛い









「あ?」

え?うそだ
ちょっ………


「『アタリ』じゃない!『アホ』だ!!」



アイスを食べきると、衝撃の事実が判明した。


『ア』はアタリの『ア』ではなく、
アホの『ア』だったようだ



精市を見ると、声を出して笑っている

「思った通りの反応だね。作りがいがあるよ」


私のアホ面を見るために作ってきたのか…!
なんてヒマなやつ!



「あ、俺アタリだ。やったね」

くっ…!