今日から新学期。
ついに夏休みが終わってしまった。


長かったような、短かったような…

夏休みといっても夏期講習や部活やらで、ほぼ毎日テニス部のメンバーと会ってた気がするなぁ。


始業式を終えて教室に戻りながら、お祭りや合宿に行ったことを思い出した。




あ、噂をすればなんとやら

丸井くんだ。
廊下で壁にもたれながら携帯電話をいじってる


「よぉ!小宮山ー。…あ、ちょうどいいや」


丸井くんもこちらに気付いたらしく、いつものように人懐こい笑顔で話しかけてきた。


「何がちょうどいいの?」

「今日部活終わったら、ラーメン食いに行かね?4人以上で行ったら30%オフのサービスデーなんだよ!」


「ラーメン?!」

久しぶりに食べたいかも!と目を輝かせたら、
丸井くんがうんうんと満足げに頷いた………あ、待てよ…

「よっし、じゃあ決まりだ…」
「あ!ダメだった!」


思い出した!今日はダメなんだ!


「えーマジかよ。なんか予定あんの?」


「今日晩ご飯エビフライだから。早く帰らなきゃ。ラーメンはまた今度。」

「はぁぁ?んなもんいつでも食えんだろが」

「いつでも食べらんないよ!揚げ物めんどくさいからって、お母さんたまにしか作ってくんないんだから!」


あからさまにガッカリした丸井くんに少し悪いと思いつつも
エビフライには変えられない。
すまん丸井くん!
I love エビフライ!




「なにこんな目立つ所で恥ずかしい議論してるの。」



この声は……


「聞いてくれよ幸村くーん、小宮山が俺等よりエビフライとるっつーんだぜ〜!」


幸村くんだ!
残暑厳しい中でも相変わらず涼しげな空気をまとってる。



……恥ずかしい議論で悪かったな…!



「でも、もしかしたら今日はブン太もラーメンお預けになるかもしれないな。」

「え?!何で?!」

幸村くんの意味深な言葉に丸井くんが必死で食いついた。


「今日の部活終わりにミーティングをしたいんだ。」


「ミーティング?」


「そう、海原祭に向けて。」


海原祭…そうか、もうそんな季節か


「え、もしかして何かやるつもり?」

え、クラスでも参加するのに部活でも?
え、そんな積極的に海原祭に参加したことないんだけど…


「もちろん」

幸村くんは満面の笑みだ。

一見天使のようなのに、何故か嫌な予感しかしない。




「じゃあまた部活で。」


何だろう。
何する気なんだろう。


賑やかな廊下で、丸井くんの「ラーメン…」という声が妙に悲しく響いた。