何の鳥かは分からないけど、確実にスズメや鳩ではない鳥の声がする。
その背景には日光でキラキラ光る木々や海。

こんな爽やかな朝とも今日でお別れだ。


「あーぁ、もう合宿終わりか〜…」

「すぐ学校も始まるしな」

丸井くんはソファにもたれて大きな欠伸をしているし、ジャッカルくんも眠たそうだ。

昨日結局寝る前にポーカーをしてしまったんだよね…
仁王くんがすごい生き生きしてた気がする。




「みんな準備できたね?そろそろ出発しようか。」


部屋やお風呂、キッチンとかもキレイに掃除したし
荷物もまとめたし…

うん、大丈夫なはず。



少し確認した後に、荷物を持って外へ出た。


帰り方は行きと同じ。
来る時のわくわくした気分を思い出して、なんかしんみりしてしまった。



特急電車に乗ってしまえば、あっという間に現実世界だ。

やだな〜
実はほんの少し、宿題が残ってるんだよね…
みんなは終わったのかなぁ。

…切原くんはきっと終わってないと思うな。



「私達が乗る電車は既に到着しているようですね。」

柳生くんの声に反応して顔を上げると、行きに乗ったのと同じ型の特急電車が待ち構えていた。


「俺、売店行きたかったんだけどなぁ…」

「発車までまだ時間あるから行ってきてもいいよ。たしか改札の中にあるし」


「やった!俺ちょっと行ってくるわ!」

「あ、俺も俺も!」


幸村くんのお許しが出たので、丸井くんと切原くんが上機嫌で走って行った。


私もトイレ行っておこうかな。

「私もちょっと行ってくるね」


「じゃあ俺たちは先に席に座っておくよ」


大きい荷物は真田くん達が席に運んでおいてくれると言うので、お言葉に甘えて小さいカバンだけ持って行くことにした。




丸井くん達、またいっぱいお菓子買って来るんだろうなぁ。

私も時間あったら売店行きたかったけど、ちょっと無理そうだな。

時計を見ると幸村くんが言ってた発車の時刻に近付いていたので、
トイレを出てまっすぐ電車に戻った。





「あれ?もう寝てる…?」

席に着くと、ぐうぐう眠っている丸井くんと切原くんの姿が。


「食いながら寝たみたいじゃな。」

あ、ほんとだ。
膝に開けたお菓子をのせたまま器用に眠ってる。


車内に戻ったの、私が最後だったみたい。
えーっと、空いてる席は…



「俺の隣空いてるよ」



声がした方を向くと、幸村くんが余裕の笑みを浮かべていた。



ゆ…幸村くんの隣…か



昨日のお月見を思い出すと、なんか気恥ずかしいけど
そこしか空いてない。
大人しく座ろう。



「窓際座っていいよ」

「あ、りがとう」



「なに?緊張してるの?」


「しっしてない!!」


口ごもったら負けだ。
隣でクスクス笑う声が聞こえる。

くやしい…!





いつの間にかみんな目を閉じて眠る雰囲気になっているので、私も眠ることにしようと窓の方を向いて目を閉じた。



3日間、騒がしかったけど楽しかったな。

ごはんを一緒に食べたり
海で遊んだり

いつもと違うこといっぱいしたなぁ


目を閉じると、みんなの顔とかいろんなことが次々浮かんできて

いつの間にか眠っていた。












「ん……」


電車と電車がすれ違う大きな音か
びっくりした…

あー、けっこう寝たかな
でも、まだまだ眠たい…


すっごく深い眠りについてたみたいだ

なんか気持ち良かったなぁ…



あれ?

私、カーディガンなんか掛けて寝たっけ…?ていうか私のじゃないな…






あぁ、これ…幸村くんのか……


しかもわたし、幸村くんの肩に思いっきりもたれてるよ……


まぁ、いいか…

なんか
心地良いし…


それにしても


キレイな顔…してるなぁ……




冴えない頭で少し考えたあと、またすぐに眠ってしまった




キレイな顔してる、なんて思ってしまったのは
きっと寝ぼけていたせい


そうだ。
そうに違いない。






駅に着いて完璧に起きた時に、カーディガンも掛けてもらった上に肩までかりてたという事実に驚愕の悲鳴をあげるのは

この2時間後くらいのお話