合宿当日になった。

朝の7時に駅に集合。
いつもよりかなり早いけど、こういう時はすぐに起きられるから不思議だ。

荷物も重いけど、わくわくしているせいで苦にならない。


朝は空気も少し冷たくて、とても清々しい気分だ。



「おはよう」

駅に着くと
幸村くん、真田くん、柳くん、柳生くんがすでに到着していた。
さすがしっかりしてる組。


「おはよー…」
それにしても、みんなと私服で会うのは初めてかも
いつもと違う雰囲気に少し緊張するな…
なんか、顔が見れない



「おはよーございまーっす!」
「おはよーう」

そんな緊張を吹き飛ばすような、明るい声がした方を向くと
切原くん、丸井くん
その後ろに仁王くんとジャッカルくんがいた。


「よし、これで全員揃ったね。」

幸村くんが確認し、駅の改札へ向かう。


「切原くんと丸井くん、荷物多くない?」
3泊4日だから、みんなそこそこ荷物は多いけど…それにしてもこの2人はパンパンだ


「いや〜、だって海っすよ海!」

「いろいろ詰めたらこうなっちまったんだよ」


「女子か」

というか女子の私より荷物多いんだけど
何が入ってるんだろう。




「はい、じゃぁこれ切符。無くさないように」

改札の前まで来たところで、幸村くんが切符を配ってくれた。

いつもより大きい特急の切符
なんか旅行って感じするなぁ!うきうきしながら改札を通る。

「赤也、お前の切符は俺が預かっておこう。」

「げっ…いいっすよ!子どもじゃないんすから!!」

「電車ではしゃいで失いかねんだろうお前は。」


「仲がいいなぁ。よし、真田と赤也は隣の席ね。」


「えぇー!!部長ー!」

切原くんは心底かんべんしてくれといった表情だ。
でもこの2人、親子みたいで和むんだよね。


「じゃぁ小宮山は俺の隣な!新商品のお菓子、いっぱい持ってきたから一緒に食おうぜ」


「うん!」

席に座ると、丸井くんは大きな鞄からお菓子をいっぱいとりだした。


「…鞄の中ほとんどお菓子じゃない?」


「あー、そうかもな。だって3泊だぜ?これくらいはいるだろ!」


向こうで買えばいいのに…だから鞄がパンパンだったのか。
まぁ丸井くんらしいけど。


ここから2時間くらい電車に乗るらしい。

朝早かったのに、みんな寝る気配がなく
さっきからしゃべりっぱなしだ。

私は少し寝ようかとも思ったけど、丸井くんにポッキーを鼻にさされそうになったのでやめた。
油断したら何されるかわかんないよ…!
まぁなんだかんだ言って楽しいから、寝るなんてもったいないしね。



そうこうしている間に、窓から見える景色が変わった。

「お!海だ!」

「海が見えたということは、もうすぐ到着ですね。」


学校からも海は見えるけど、車窓から見る海は一味違ってなかなかオツだ。


「次の駅で降りるから、広げた荷物はまとめておくように。」

幸村くんの指示に従って、お菓子のゴミをまとめたりと
降りる準備を進める。


準備万端!といったところで丁度アナウンスが入り、電車の速度が遅くなった


「おー着いた着いた!」

ドアが開き、涼しい車内から
もわっと暑い外へと飛び出した。
さっきまで寒いくらいのクーラーに当たっていたから、あったかいなぁと思ったけど
そんなのは一瞬で、すぐに暑くてたまらなくなった。

セミがこれでもかというほど鳴いている。


「駅は意外と現代風っすね」
切原くんが、コンクリートとガラスで出来た駅を見て言った。

「特急が停まる駅だからじゃね?」

「ああ、ここから普通電車に乗り換えるからね。もうすぐ電車が来るはずだよ」


幸村くんの言ったとおり、しばらくするとカンカンと踏み切りが閉まる警戒音がなり、電車がゆっくりやってきた。


「おぉ!2両しかない!」

「なんかかわいいね」

短い電車に乗り込むと、乗客はおばあさんが1人だけ
すごく和む雰囲気だ。


「やべー俺、みかん食いたくなってきた」

「ダメだよ。すぐ着くから。」

特急よりも海の近くをゆっくり走る普通電車
丸井くんじゃなくてもゆっくりお茶でも飲みたくなる雰囲気だ。

海が太陽の光をキラキラ反射させている。
ずいぶん遠くまで来たなぁ



3駅ほど電車に乗り
降りた駅は木造の、歴史を感じる駅だった。




「うわ〜人が全然いないっすね〜」

確かに、私達以外降りた人はいないようだ。

「人口が少ない町だからな。のんびりしていて良い場所だぞ。」

そっか、柳くんは来慣れてるんだよね。



「ここから少し歩いて船に乗るよ。」

「船?!」

まさか船にまで乗れるとは!

小さな港に向かい、小型船に乗り込んだ。



「うわー!海すごい綺麗だね!」

こういうのをエメラルドグリーンっていうのかな?
底まで透けて見えそうだ


なんかおいしそうだな…

きみどりのような水色のような海水が、ふるふると波に揺られてる
固まりかけのゼリーみたいだ


「うまそうだよなぁ…」

さすが丸井くん
私と目のつけ所が同じだ


「ゼリーみたいだよね」


「だよなぁ!俺、海の水が甘かったらぜったいすげぇ飲むわ」

「それ最高だね。あ、でも海水が甘かったら魚がおいしくないかもって昔やったゲームのキャラが言ってたよ」


「なるほどな!甘露煮もうまいけど、塩焼きが一番だもんな!」



「……君らよくそんなことでそこまで話を膨らませられるよね」


「い…っいいでしょべつに!」
けど確かに少しはずかしい
まさか幸村くんに聞かれていたとは…


「見えてきたぞ。あの島だ。」

柳くんが指す方を見ると、自然いっぱいの島が見えてきた。


「おー!カブトムシとかいっぱいいそうっすね!」

「虫とってる暇なんかないだろうがな」

でもそう言うジャッカルくんもなんだか楽しそうだ。


ここで合宿が始まるんだなー

楽しみなような緊張するような不思議な高まりをおさえるように、持っていた荷物をぎゅっと握りなおした。