「おはよー」

「あ、おはよーヨウコ。ガム食べる?」


ガム…!
体がピクリと反応した。昨日のことがちょっとトラウマになっているようだ。


「それより、どうなの?テニス部!全員と話した?」
私の友人、あっちゃんはレギュラー大好きだから、目をキラキラさせている。

ちなみにあっちゃんは、レギュラーの私物がほしいと呟いていた子だ。
部室で柳くんと幸村くんに捕まった後、「テニス部の雑用をされられることになった」と半泣きで報告した私に「よくやった!」とのたまった、残念な親友である。


「全員とはまだ話してないなぁ。やっぱ学年違うとあんまり関わりないし」


「レギュラーとは?全員話した?」

「うーん、大体は…あ、真田くんとは話してないかも」
アラームの声の主だけど


「へぇ!でもすごいじゃない!ヨウコには期待してるわ。」



「はいはい」

呑気なもんだ












「お、いたいた!小宮山〜」
「小宮山先輩、おはようございまーす」





「げっ?!」なんでうちのクラスに丸井くんと切原くんが?!





「なに?!どうしたの朝から」

「いや〜、昨日ちょっと笑いすぎたかな〜と思ってさ」
「ちょっとしたお詫びを持ってきたっす」




お詫び〜?
ほんとに?
ちょっと疑わしい目で2人を見た。





「ほれ、昨日俺が焼いたブラウニー。天才的だろぃ」


「え!手作り?丸井くんの?!すごっ!………うん、おいしい!」


「食うのはえーよ」





丸井くんて食べるだけじゃなくて作れるんだ…!
ちょっと尊敬。
しかもうまい。






「で、これは仁王から」
丸井くんはそう言って、中身が見えない袋を取り出した。

「え、仁王くんまで?!」



なんだろう
クッキーぽいけど

あのチョロ毛もちょっといいとこあるじゃないか!








とりあえず開けてみよ…

「ってこれゴミじゃない!!」

中からっぽだし!
クッキーが入っていたと思われる粉だらけ
あのやろぉ…!




「ま、あいつが素直にお詫びなんかするわけねぇよな」

「さすが仁王先輩っす」


さすがじゃねーよ

「じゃ、また部活でな〜」
そう行って2人は教室から出て行った。







はぁ…
結局また嫌がらせされただけでは…?
いやいや、ブラウニーはおいしかったしそんなことないか





それにしても
教室の中がやけに静かだ


周りを見渡すと、クラスの女子がこっちを見て固まっている








「きっ…………」


?なに?










「きゃー!!」「こんな近くでレギュラー見たのはじめて!」「うそー!ちゃんと寝癖なおしてきたらよかったぁ!」「やっぱかっこいいー!」




なに?!
1人が声をあげると、クラスの女子が次々騒ぎだした


「あんたすごいよヨウコ!うちのクラスの希望の星だ!」
「ヨウコちゃんありがとう!」
「ヨウコちゃんがうちのクラスでよかった!」



「は?」


あっちゃん曰わく、うちのクラスにはテニス部レギュラーがいないから、近くで拝める機会がほぼないらしい。


「私もあんな近くで見たのはじめて!」

あっちゃんも興奮ぎみだ




「へぇ…」
やっぱすごい人気なんだな

めちゃくちゃで腹立つこともあるけど、確かに悪い人達じゃないしね。
雑用やる前より、少しずつ奴らの人気がわかってきた。



その日の放課後は、クラスの女子に「がんばれ希望の星」と熱烈に送り出されました。