所々青い空は見えるものの、どこか靄がかかってすっきりしない冬の朝

バス停には私一人しかおらず、心を落ち着かせるように大きな白い息をはき出した。



今日はいよいよ受験本番、試験当日だ。

私が受けるのは立海大学。
幸村先輩と同じ大学。
おそれ多くもお付き合いさせていただいている幸村先輩は、一年早く立海大学に進学している。
高校が立海ではなかった私には、なかなかの難関校ではあるけれど
この一年、先輩にお世話になりながら必死に勉強した。
絶対に受かりたい。


幸村先輩とのラブラブ大学生活満喫大作戦のために!!





でも、

そういえば今日は幸村先輩からメールこなかったんだよね…

がんばってね、くらい送ってきてくれると思ってたのに…



ずーんと気持ちが落ち込んできた。
こんな気持ちじゃいけない。
泣いても笑っても今日で最後。
今日で決まるのだ。

それならば、笑ってみせましょうホトトギス
なんて自分を鼓舞するも、笑えない。
幸村先輩がいないと笑えないよ。


いつのまにか私は、何て贅沢な体になってしまったのでしょう。









「なに暗い顔してるの。」



ゆ…………


「幸村先輩!!」


び…びっくりした!!
な…っ、いつのまに!

さっきまで誰もいなかったはずのバス停に、黒いコートにマフラー姿の幸村先輩が現れた。




「驚きすぎ」


「わっ…」

少し呆れた声とともに、顔に何かをペタっと押し付けられた。





「………お守り?」



「俺とラブラブ大学生活満喫大作戦成功させて、俺のお嫁さんになるんだろ?ならこれくらいの関門、簡単に突破してくれなきゃ困るよ。」



え…私、本人にこんな恥ずかしい作戦の話したっけ………………ってええええ?!

お…およめさんん?!






「ほら、バス来たよ。乗った乗った」


顔を真っ赤にして口をパクパクしてる私の背中を、幸村先輩が優しく押した。

取り敢えずバスに乗り込み、入り口の所で先輩と向き合うと
そこには相変わらず、彼の余裕たっぷりの優雅な笑顔。




「せ…せんぱ…」



「大丈夫。できるよ。」



プシューっとドアが閉まり、エンジンが動く音がした。


「ありがとうございます!がんばります!」


ドア越しだったから、ちゃんと聞こえてるか分からないけど
幸村先輩は優しく笑って手を降ってくれた。





がんばる…!
絶対がんばる!



さっきもらったお守りをぐっと握りしめて
幸村先輩のマネをして、強気にフフンっと笑った。




今の私は絶対的に無敵だ。