街路樹も黄色に染まり 秋も深まってきた。 「名字、花壇行かない?」 「行く!」 同じクラスの幸村くんと、肩を並べて花壇へ向かう。 彼も私もガーデニングが趣味で、いつのまにか美化委員ではない私も花壇の手入れを手伝うのが日常になってきた。 こんな言葉があるのかわからないけど、土いじり友達といったところだ。 「そろそろ球根を植える準備をしようと思うんだ」 「お、いいね!何の花?」 「アネモネ」 幸村くんはそう言って花壇近くの棚から、土の入った袋を取り出した。 アネモネは水はけの良い土がいいから、赤玉土を多めに 石灰と緩効性肥料を混ぜ込んで… 土に触る幸村くんはとても幸せそうだ。 「よし、土はこれで良いかな。一週間後くらいに球根を植えるから、また一緒にやろうよ。」 「うん!あ、球根はもう用意してあるの?たしか根が出てから植えるんじゃなかったっけ?」 「一昨日くらいから濡らしたキッチンペーパーに包んでるから大丈夫だよ」 「さすが。楽しみだね」 まだ少し休憩時間は残っているので、花壇近くのベンチで休むことにした。 「花が咲くの、楽しみだね〜。あ、他は何か植えるの?」 「そうだなぁ。チューリップかな。みんな知ってる花だしね。」 「チューリップかぁー」 花でいっぱいの花壇を想像したら、自然と顔がにやけた。 「名字が同じクラスでよかったよ」 「…なに?急に」 「趣味がガーデニングの同級生なんて今までいなかったからさ。こうして花の話ができて、楽しいなーと思ってさ。」 幸村くんはにこにこしながら話を続けた。 「それにね、俺あんまり女の子の友達いないんだよね」 「ん?そうだっけ?」 友達っていうか、女の子に囲まれてるとこはよく見る気がするけど 「名字にだから言うけど…女の子には大抵恋愛対象として見られちゃうから。友達になれる子っていないんだよ」 「うわ〜…モテる人は言うことが違うね〜」 冷やかすように言うと、幸村くんは困ったように笑った。 「名字は俺のこと、絶対好きにならないだろ?だから安心して一緒にいられる貴重な存在なんだよ」 「なぁにそれ」 なんだか気分が良くて、空を見上げた。 2人分の笑い声が、高い高い空に吸い込まれていく。 一緒にいれば、全部が笑い話にできてしまうような 大事な友達。 そんな日常。 |