「なんやこれ!」

練習が終わり、いちばんに部室の扉をあけた謙也の大きな声が辺りに響いた。


「どーしたん〜」
「なんやなんや」

部室の入り口で固まってる謙也の後ろから、レギュラー陣が部室の中を覗く。



「は?!」
「うっわ!」


「ごちそうやーん!!!」
そう叫ぶなり真っ先に部室に飛び込んだのは金ちゃん。


部室にある机の上に、おいしそうな料理がずらーっと並んでいる。


なにこれ
練習前にはこんなのなかったよね



「たこやきやー!!」

「ちょい待ち!金ちゃん!」

何の疑いもなく料理に手を付けようとした金ちゃんを慌てて白石が止めた…と思ったら今日は謙也が先に金ちゃんを止めた。
白石もちょっとポカンとしてる。


「えー!わい、早くたこ焼き食べたいー!なぁ名前子〜」


駄々をこねる金ちゃんはいつも通りだけど…
謙也は深刻な顔してどうしたんだろう


「謙也?どないしたん」
みんなもただならぬ雰囲気を察したのか、謙也をじっと見た。


「だって考えてみ?練習前にはこんなん無かったのに、今部室に入ったらこのうまそうな料理の数々…」


「うん…?」


「これは…ネタフリやろ!確実に…!!」


「え?」
何を言い出すんだこの人は


「やから!この料理を使ってモノボケをせえっちゅうことや!」



…………………なにそれ



「モノボケって…なんね?」

「説明するんは難しいけど…その場にある道具とかを他のもんに見立ててボケるってことやな」

白石が冷静に千歳に説明をしている。


「これは俺らに叩きつけられた挑戦とみた!!」

なんか暑くなっちゃってるよ謙也…







「小春先輩、あーん」

「あ〜ん☆」

「ああっ!財前!何小春といちゃついとんねん!」


こっちはこっちで何やってんの…

財前が小春くんの口に、ぜんざいをスプーンで一口運んだ



「あほ!財前!何フツーに食わしとんねんっ」

「謙也さんの、おもんなくて伝わらないモノボケ見とるヒマないんすわ。せっかく熱々のぜんざいが冷めてまうでしょ」


「光きゅん!めーっちゃおいしいわぁ。もう一口…」
「あ、ほんまっすか。ほな安全っちゅーことで。いただきます」

「コラァ!財前!なに小春を毒味役にしとんねんっ!」







「お〜、お前らもう食ったか〜?」

「あ、オサムちゃん!これ何か知ってるん?」

オサムちゃんがいつものようにフラ〜っと部室に現れた


「何かなぁお祝いらしいで。冷めんうちにはよ食い」


「やったー!!」
金ちゃんは大喜びで料理に駆け寄った。


「そうそう、ほんで食う前にコレ。言ってって」

そう言いながらポケットから紙を取り出した。

「なんやコレ。くっしゃくしゃやん。」

白石が苦い顔をして紙を開く。

「最初はキレイやってんけどなぁ。寝てたらくしゃくしゃなってしもたハハハ」

「…寝てたんかい」

呆れながらも手紙に目を通す白石。
みんな内容が気になるようで、輪になって覗きこむ。


「いただきますの前に、このセリフをみんなで言えって?」

手紙にはたった2行の文章


「なんやこれぇ?」
「モノボケ、関係なかよ」
「くっ…」
「ほぅ…(ええネタ思いついとったんやがのう)」
「不思議やねぇ」
「不思議がる小春も好きやー!」
「めんどいっすわ」





「ま、ほなちゃっちゃとやろか。せぇのでいくで?…せぇのっ」





『一万hit、おおきに!』