「うわ!なんだこれ!」

練習が終わり、部室にいちばんに戻ったブン太が大きな声を上げた。
驚きと喜びがまじったような、そんな声。

「ブン太どうしたのー?」
何事かと不審に思いながら部室に向かうと、コートにいたレギュラー陣もこっちにやってきた。



「おぉ!すげぇ!」

部室を覗くと、そこには机いっぱいにおいしそうな料理が並んでいる。


なにこれ…
料理はどれもほかほかと湯気をたてている。
練習が終わる時間を見計らったかのようで気味が悪い。


「練習の前はなかったよね…?」
「名前子、何があるかもわからんからちょっと下がっときんしゃい」

そう言って仁王が少し私より前に出た。


「これ食っていいんすかね!」
「いや、待て。」

「そうですね。すぐに食べてしまうのは危険です。いくら校内とはいえ、誰が用意したかも分からないのですから。」


「え〜、こんなにうまそうなのに…ってもう食ってる!」


「うめぇー!この肉最高だぜ!」

「丸井くん!あなたという人は…」

「困ったものだね…」

すでにバクバクとすごい勢いで料理に手をつけているブン太を、柳生と幸村が苦笑いで見た。



「丸井先輩〜大丈夫なんすか?」

「おなか壊したりしない…?」

今のところめちゃくちゃおいしそうに食べてるけど…
こっちまでおなかすいてきた


「大丈夫だろぃ。毒味したし。ジャッカルが!」


そう言えばさっきから何も言わないジャッカルの方を見ると、口に食べ物を詰め込まれすぎた状態で苦しそうにしている。

そのせいでしゃべれなかったのか…
かわいそうに





「あー!そういえば!」

「どうしたの赤也」
急に赤也が何かを思い出したようで、みんなの視線が赤也に集中した。
…ブン太はあいかわらず食べてるけど



「思い出したっす!」

「何を?」


「朝に先生が、『お祝いの品を部室に置いておくから』って言ってたんす!これのことだったのかー!」

「馬鹿者!何故すぐにそれを言わんのだ!」

「遅刻しそうで焦ってて〜あんま頭に入ってなかったっす」

「また寝坊したのか!余裕を持って起きろとあれほど言っとるだろう!」

また真田のお説教が始まった…

でもそっか

この料理はお祝いの品なのか。
赤也が最初に思い出してれば、ジャッカルも口を食べ物でぱんぱんにされることもなかったろうに…


「そういうことなら、見ているだけなんてもったいないね。せっかくだし冷めないうちにいただこうか。」


真田のお説教を遮って、幸村がにこにこしながら言った。


食べれるとなるとおなかが
ぐうと鳴ってきた。


部活終わりだし、みんなおなかぺこぺこなはずだ。





ん?

「幸村くん、何か手紙が置いてあるよ」

まるいイチゴのケーキの横に、ひっそりと白い封筒が置いてあった。

「どれ?名前子、読んでみてよ。」


「えーっと…」
慌てて封筒から手紙を取り出す。

みんなそれぞれ席に着いて、食べる準備は完了だ。



手紙には文章が2行だけ


「これ。食べる前に言ってくださいって」
みんなに見えるように、手紙を上にあげた

「あ?なんだそりゃ」

「食べる前って…丸井はもう食っとるのう」

「不本意ながら俺もだ」

「ジャッカル先輩は事故みたいなもんすよ」

「何が目的なのでしょうね。」
「解せないな。」

「うむ。」



「まぁ、いいんじゃない。じゃあ、せーのでいくよ。せーの、」




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