今日は学校帰りに友達のみっちゃんとショッピングモールに寄った


アクセサリーやかわいい小物があるお店を見て、ちょっとおなかがすいたので
アイスを食べようってことになった。


「私チョコにマシュマロ入ってるやつにしよーっと」

「あらー、いつまでたってもお子ちゃまだね!名前子は!私はチョコミント〜」

「えー?チョコミントって歯磨き粉の味しない?」

「そんなおいしい歯磨き粉あったら迷わず食用にするわ」

私たちの頭はもうアイスでいっぱいだ。
あー!早く食べたいっ!




「ねぇねぇ、君ら今からどこ行くの?」

上機嫌で歩いてると、知らない学校の制服をだらしなく着た2人組の男の子に声をかけられた。



「アイス食べに行くとこ」
うわ〜みっちゃん余所行き用の笑顔だ…
そんな友人とはうらはらに私は苦笑いを隠せない。早くアイス食べたいのに邪魔すんじゃねーという気持ちでいっぱいだ。


「へ〜、じゃぁ俺らといっしょに…」
「いえ、もう帰るのでさようなら!!!」

私は男の子の話を遮ると、みっちゃんの腕を引いて早足でその場を去った。











「も〜、名前子のせいでせっかくの出会いのチャンスが〜!」

しかたなく少し遠い方のお店に入って、やっとアイスにありつけた。
でもみっちゃんはちょっと不服そうだ。


「まぁまぁかっこよかったのに〜」

「どこが?!」
あのへらへらした笑み!品定めするような目線!気持ち悪いったらない


「あんたねー、幼なじみの幸村くん基準に考えてんじゃないでしょうねっ」
みっちゃんはコーンをがりがりかじりながら言った


「べつに…そんなこと…」

「言っとくけどっ幸村くんなんて特上中の特上よ!あの人基準に考えてちゃダメよ。めったにいないんだからあんな人!」


精市とは違う学校に通ってるのに、クラスの子で精市を知ってる子は多い。
有名な立海テニス部の部長だしね

べつに精市を基準になんてしてないけど…

腑に落ちないながらもその日はアイスを食べて家に帰った。





寄り道したのにまだ外は明るい。もうすぐ夏だな〜


だんだん家に近づいてくると、見慣れた人影が見えた


「あ、名前子おかえり。」

「精市も。今帰り?」
制服姿で相変わらず重そうなテニスバッグを持っている


「まぁね。…あ、そうだ。今から散歩しない?」

「散歩?今から?」

「まだ夕食まで時間あるだろ」
「まぁ…」
幸村家とうちは家族ぐるみの仲なので、だいたいの生活リズムは把握している



「じゃあ決まり」
精市は、ふっと笑って家を通り過ぎて歩いたので私もそれに続いた。




ごはん何かなーとか、もうすぐテストだとか他愛もない話をしながら歩いた。

さっきまで空は少し明るいオレンジだったのに、今はだんだん濃紺に染まりつつある。
そのグラデーションが見事だ。
この時間帯の空ってすごく幻想的だと思う。不思議な世界と続いていそうな気がする。

隣を見上げると、制服姿の精市。こうして制服で一緒に歩くってあんまりない。

だからかなぁ
さっきからいつもよりどきどきするのは

やっぱり精市はきれいだ。


「ぅわっ」
よそ見しすぎてアスファルトのでこぼこに躓いてしまった


「危なかっかしいなぁ…」
呆れたように言いながらも、支えてくれたようだ



「ごめ……ぁっ」
さっき支えてくれた精市の右手が私の左手を捕まえた


手…!

なんか…顔が熱いかもしれない


「ほら、行くよ」
そんな私をからかうように笑いながら、繋いだ手を引かれた「ちょ…手!手!」
このまま歩くの?!
恥ずかしい!

「何か不満?昔はよく繋いだじゃないか」

「そうだけど…!昔と今は違う…」
「何が違うの?」






……何が違うんだろう


昔は子どもで、今も子どもだけど少しは大きくなった

昔は身長も同じくらいだったのに今じゃぜんぜん違う

精市は男で、私は女なんだと思い知らされることが増えてきた。その違いを感じるたびに、心臓のあたりがきゅっとして…でも心地よくて
今だってそうだ。
繋がった左手が熱くてしょうがない。



「今日は満月だね」
緊張する私をよそに精市は月を眺めていたので、私も平常心に戻ろうと、同じように月を見上げた。




『あっ』

2人の声が重なった

空に一筋の光の線

それが流れ星だと分かったのは、精市がさっきよりもぎゅっと強く私の左手を握ったから

この手を離したくないな…
そう思って私も少し左手に力を込めた。




「良いものも見れたし、そろそろ帰ろうか」



そう言った精市が、今までよりきらきらして見えるようになってしまったのは
さっきの流れ星が私の瞳に入ってしまったからだろうか


星をとじこめるように、すこし目をつむった