「良い天気だな〜」

日曜日だけど特に友達と遊ぶ予定もないので、座布団を2つ折りにしてゴロゴロ

カーテンをゆらしながら窓から入ってくる風がきもちいい

窓から見える庭の葉っぱが太陽の光で金色みたいな黄緑色になってる。

直射日光は苦手だけど、木漏れ日ってなんでこんなに気持ちいいんだろう


暑くもなく寒くもなく
春って気持ちいいなぁ〜


目を瞑ると意識がだんだん遠のいていった






















『…っ…―…は――ね』


う〜ん……

物音が聞こえてうっすら目を開くと、テレビがついていた

口が×の有名なウサギの人形劇…懐かしいなぁ

でも私テレビなんかつけてたっけ?

少し視線を上げると、起きていた時にはいなかったはずの人物がいた


「…精市?」

「日曜の昼から爆睡なんて、良いご身分だね」

ダメ野郎を見る目で見るな…
…………あ?


「ちょ…!それ!私のプリンじゃない?!!」

精市が持ってきたのでなければ、それは昨日私が買ってきた新商品のプリンだ


「そうなの?知らなかった」

「いやいやいや!剥がしてあるフタに思いっっきり名前子って書いてますけど!」

私の家と精市の家はお隣で、いわゆる幼なじみ
家族ぐるみの付き合いなので、勝手に精市が家に上がり込むのはよくあることだ。

だから、精市に食べられないようにプリンに名前を書いておいたのに…!

「ふぅ…甘かった。新商品って書いてあるけどイマイチだったよ」

「バカーー!」
勝手に食べて酷評するとかどーいう性格しとんじゃ


「あ、このおっさん声のネコ懐かしいなぁ」

「無視するな!」
人の抗議を無視してニャンち○うに夢中だ

「それよりお茶いれてきて」

はぁ…
もう何言っても無駄だな…





「…今日は部活ないの?」

「うん。たまには休まないとね」

「ふーん」

そういえば、精市とこんなにゆっくり話すのも久しぶりかもしれない

暇な私とは正反対で、いつも部活で忙しそうだし

小さい頃はよくこうやって一緒に子ども向け番組を見たなぁ…
なんか懐かしい。


「このイラストコーナー、俺が投稿しても採用されるかな?」

「されないでしょ!子ども向けなんだから」

採用されて
神奈川県 ゆきむら せいいち くん (15)
とかなってる図を想像したらおもしろいけども!のんびりした休日

私は別にいつも通りだけど…

「精市は貴重な休みなのにこんなもったいない時間の使い方でいいの?買い物とか行かないの?」

「たまにはのんびりするのも良いかなと思ってね」


「ふーん」
確かに毎日部活と勉強で、のんびりなんてなかなかできないよね


「それに、好きな相手と過ごして充電するのが一番だからね」

「…………」


「…………」








「…やだなぁ〜なによ改まっちゃって!私も精市のこと家族みたいに好きだよ!ムカつく時もあるけど!」


「……予想通りの反応ありがとう」


「え?なんて?」
「別に」


「や〜、なんか照れるわぁ〜」

「…お前さ、もし俺に彼女できたらどうする?」

「え?!精市彼女いるの?!」
初耳だ…!
びっくりしすぎて机に膝を打った

「『もし』って言ってるだろバカ」

あぁ…『もし』か

考えたこともなかったけど…
もう中3だもんね
彼女がいてもおかしくない

精市の隣に知らない女の子がいるのか…
私と違ってきっとかわいい子なんだろうな。
私とは正反対で頭も良くて性格も…って何で私が出てくるんだ


「なんか…よくわからないけど、悲しい気持ちになりました…」


「ふーん」

頬杖をついてこっちを見る精市は、なんだか満足そうだ


「じゃあさ、もし私に彼氏できたらどうする?」


「……」
精市は一瞬びっくりしたような顔をして、何か言いたそうだったけど
すぐいつも通りのからかう笑顔になった

「名前子に彼氏なんかできるわけないだろ」

「…うるさい」
けど否定できない




「これは何の質問なの?」

「別に。」


なんじゃそりゃ
意味が分からない

「ま、名前子が分かるまで、もうちょっと待っててあげるよ」

「?」

何を分かるの?

でも精市が何だか楽しそうだから、嬉しくなってくる

よし、棚に隠してあるクッキーもごちそうしてあげよう









それが恋だと分かるまで