久しぶりに一緒に帰ろうと
精市の部活が終わるまで、薄暗くなりつつある図書室で待つことになった。

さっきまで本を読んだり、勉強していた生徒もだんだん少なくなっていき
とうとう私一人。

そろそろ精市も部活が終わる頃だろう。

窓から見える青紫の空が綺麗だなと
ぼーっと眺めていると、
後ろからガラリとドアが開く音がした。


「ごめん、おまたせ。」

「お疲れさま」

精市は、フーっと息をはいて
どさっと私の隣のイスに座った。

あれ…なんか、疲れてる?


「……大丈夫?」

なんて思わずきいてしまったけど
精市のことだ
大丈夫って言うに決まってる


「大丈夫………」

ほらね
私には弱いところなんてちっとも…



「……じゃない、かも」

「…!」


え?あれ??


「なに、その予想外な表情」

「え?!いや、だって…」


精市が!
あの誰にも弱ってるところを見せたがらない精市が!


私に…大丈夫じゃないって…!!


不謹慎ながら、嬉しいと思ってしまった。


「なに笑ってるの」

緩むのを必死におさえようと、ひくひくする頬をぐにっとつままれた。

「だって……精市が初めて弱音、はいてくれたから…」


いつも優しい人だから
私に心配させまいとしてくれているのはわかってる

わかってるけど、すこし距離があるようで
さみしかったんだ


「嬉しくて………。ごめん」


「弱音吐かれるのが嬉しいの?」

だまって こくりと頷くと、さっきまで私の頬をつかんでいた手が
今度は優しくポンっと頭に触れた。


「変なの」

でもそう言う精市の顔は、嬉しそうに笑っていた。


こうしてこれからも、少しずつ
距離を縮めていけたらいいね。

心の中から幸せがむくむく湧き上がってきて
二人で見つめあって笑った。