驚いた


職員室に呼ばれた後、柳と練習メニューの打ち合わせをする約束があったので
部室のドアをあけると

パーンと乾いた音がいくつも鳴って、きらびやかな紙吹雪がちらちらと舞った。


「誕生日おめでとー!!」

部員達の声に、自分の誕生日パーティーか、と気付く。


「幸村くんおめでとー!」
「おめでとうございます!部長!」


「みんな…ありがとう。内緒で準備してくれてたのかい?」

大成功と言わんばかりにみんな笑った。


「ささ、部長!フーって!」

おそらくブン太の手作りであろうケーキにささったろうそくの火を
すこし照れながらも一気に吹き消した。


「そしてこれは私達からのプレゼントです。」

「ありがとう…開けてもいいかな」

「もちろんです。」

柳生からプレゼントを受け取り、包装紙が破れないように開けると
ずっとほしかった画集がでてきた。


「嬉しいよ。ありがとう」

この感謝の気持ちを、どんな言葉で伝えれば
全部表すことができるんだろう。

すごく嬉しいのに、ありふれた言葉でしか伝えられない。


表紙をめくると、一気に引きこまれて
時間を忘れて見入ってしまいそうだ。


「あともう1つ、プレゼントがあるんじゃが」

「え?まだあるの?」

画集だけでも十分すぎるほどなのに…
仁王の言葉に驚いて、思わず聞き返した。


「すぐ屋上に向かってくれ」

「屋上?」



ニヤリと笑う仁王に、これ以上聞いてもムダだろうと
おとなしく屋上へ向かうことにした。


「その間にケーキは切り分けとくな〜」

「ありがとう」

ブン太の言葉にフフっと笑って部室を出た。


屋上か…何があるのだろう。



コン、コン、コン
薄暗く人気の無い屋上までの階段に
自分の足音だけが響く。


ギィッと重い音をたててドアを開けると
太陽の眩しい光が差し込んできた。
テニスコートにいる時より空に近い分
その光は力強い。




「………名字さん…?」


光の中から現れたのは
想像もしていなかった人物だった



「あの……っ幸村くん!……お誕生日、おめでとう!!」

そう言って、真っ赤な顔でぎゅっと目を瞑りながら差し出されたものは
リボンがかかった

プレゼントだった。



名字さんが、俺に…?

夢にまで見た彼女が、
話しかけることもできなかったのに…おいしそうにメロンパンを食べる君を遠くから見てることしかできなかったのに


あぁ…でもきっと


「ごめんね、仁王達に頼まれたんだよね?」

そうだ、俺を驚かせようとして

きっと名字さんが自主的に用意してくれたものではないんだろう



「違うよ!…あ、えっと…その…」

驚いてこっちを見た彼女と目が合ったけど
すぐにそらされてしまった。




「だって…わたし、」

さっきよりも更に赤い頬

「幸村くんの、こと…」

泣きそうな声

「す…」

もう、自惚れてもいいよね?




プレゼントごと、彼女を強く抱きしめた。



「ごめん、俺から言わせて?」


君のことが、大好きなんだ。







「お〜、抱き合ってる抱き合ってる!


「コラ赤也!覗くな馬鹿者!」

「だって部室から屋上丸見えなんっすもん」

「もうすぐ二人で部室に戻ってくるだろう。」

「ケーキ、9人分に切り分けといたぜ〜」


「仁王くんは知っていたのですか?幸村くんの気持ちも、名字さんの気持ちも。」

「まぁな。もうもどかしいったらない」

「とにかく、サプライズ大成功っすね!」



HAPPY BIRTH DAY!