ざわざわといろんな人が行き交う駅の改札

朝ここに来た時は、あんなにわくわくしてたのに

夜の改札は嫌いだ。


「じゃあ、またね。次の休みがわかったら、すぐ連絡するから」

またね、と言われても
なかなか精市の手を離せない。

学校も違う、家も反対方向の私たち。
精市は部活が忙しいから
こうして休日にデートできる日は月に一度くらい。

今この手を離してしまったら
次に触れられるのは一ヶ月後。

そう思うと、あと少しだけ…と体が言うことを聞かない。

俯いて、精市の大きな手に包まれる自分の手を
焼き付けるようにじっと見た。

もっといっぱい会いたい。
ずっと一緒にいたい。
早く大人になって、精市と同じ家に帰りたい。
同じ改札をくぐって、同じ電車に乗って、同じ家に帰るの。

ずっと手を繋いだままなら
夜道だって寂しくない。


「…早く、同じ家に帰れるようになりたいね。」

自分の思いが口に出てしまったのかと一瞬驚いて顔を上げたけど、
それは間違いなく精市の声

少し恥ずかしそうに笑ってる。


「私も…そう思ってた」

そんな夢が叶うのは
まだまだ先のことだけど

今は、同じことを考えていたんだという事実だけで、十分だ。


もう一度だけ、きゅっと握った手に力をこめてから手を離した。



体は離れていても、心は繋がってる。