学校が終わり、大好きな家でのごろごろタイム。

着慣れたTシャツと短パンで寝転びながら、友達から借りた男性アイドルの写真集を眺めていると
ドアがコンコンと鳴った。


精市が来たのかな?


「どうぞー」


だらしなくずりあがっていた短パンの裾を簡単に直し、声をかけると
やはり入ってきたのは精市だった。



「ただいま。」

「おかえり!」

穏やかな笑顔につられて自分も笑顔になるのがわかる。


「あれ?」

「なに?」
さっきの笑顔はどこへやら
精市が急に眉間に皺を寄せた。

どうしたんだろう



「なにその写真集。アイドルなんかに興味あったっけ?捨ててもいい?」


「ダメだよ!べつに好きじゃないけど」

「じゃあ捨ててもいいよね」

「ダメだって!友達から借りたんだから!」

「借りた?じゃあやっぱり好きなんだ?」

「え〜もう〜借りたっていうか〜っ、無理やり渡されたの!すっごい良いから見てみろって」

「ふぅん」


一応わかってくれたみたいだけど、顔はまだまだ不機嫌そうだ。


なんなのよ一体

めんどくさっ!



「今めんどくさいとか思っただろ」

「?!思って、ないよ!!」

こわーっ!



「…ちょっとそこに正座して」

「はぁ?!」

「いいから」


説教でもする気?!
アイドルの写真集見てただけで?!


でもこれ以上さからって、更に機嫌が悪くなられてもめんどくさいし…


とりあえず言うことをきくことにした。



ふわり




どんな嫌味を言われるかと思えば

そこに落ちてきたのは言葉ではなく、
精市の柔らかい髪だった。


しかも、膝…

これは俗に言う、ひざまくら…


「ちょっ、なにっ…」


「疲れて帰ってきて癒しを求めてここに来たのにいざドアを開けると彼女が男の写真集見ながらニヤニヤしてた時の彼氏の気持ちが分かる?」


「…ニヤニヤはしてないと思うけど」


でもなんか、強く言い返せない

彼女とか、彼氏とか…
なんだか照れくさい


それにこれって…
ヤキモチってやつ?


そう思うと
いつもかっこいい精市が、急にかわいく見えてきた。

いつも余裕ぶってるくせに



「写真集、明日すぐ返すね」


「ん…」


目にかかりそうな髪を優しく手で梳くと、精市は目を閉じながらうっすら笑った。