んな日にも 35
さっきの女子と骸のやりとりをかいつまんで説明をしてるうちに獄寺さんちのマンションに着き、そのまま駐車場から部屋へのエレベーターに乗り込む。
「やっぱり沢田さんには迷惑かけちゃいましたね」
「まぁ、女子があんな風になったのはちょっと怖かったけど…」
「けど?」
「そんなに騒ぐ人に迎えきてもらえてることに若干の優越感はありました」
「えっ!?」
「だって『姫は誰よ!姫は!!』って凄かったんですよ〜?」
笑いながら獄寺さんの一歩後ろを歩いてると、部屋の前に着いたみたいでドアを開けると獄寺さんは恭しく頭を下げて言う。
「では姫、どうぞ我が家へ」
「ありがとう」
ここは“姫”にノるのが吉。とばかりににっこり笑いながら獄寺さんの横をスッと通り、先にお邪魔させてもらう。
すると、カッカッっとフローリングを爪で引っかきながら前から猫が走ってきた。そして
「あっ!う…り゙ぃぃぃぃぃ!イッタァ!!」
名前を呼ぶ前に顔面に飛び付かれ、軽くひっかかれた。
「バッ!!ふざけんな瓜!!沢田さんに何てことを!!離れろ!!」
慌てて獄寺さんが俺から瓜を引っぺがしたけど、暴れる瓜は獄寺さんをひっかいてまた俺に飛びつき頭の上に落ち着いた。
「…いや、そこで落ち着かれても」
「すいません沢田さん!!…でも…珍しいっつうか、初めてかも」
「え?」
「いや、ウチに来た事あるのってごく一部の奴なんですが、警戒心からか今みたいにここで一度ひっかくと、その後は何処かに行っちまって近づいてこないんすよ」
「頭の上で毛づくろいしてますけど…」
「すいません!!」
「や、逃げられなくて嬉しいから全然良いですよ。瓜、靴脱ぎたいからしゃがむよ?」
「あ!それなら俺が!!」
小さい頃からよく犬に吠えられ、猫にはシャー!と威嚇されてきた俺としては動物に懐かれるなんて嬉しくて、頭に乗られてるのはちょっとアレだけど、好きにさせていたくて片手で瓜を支えながら靴を脱ごうとしたら獄寺さんがサッと跪いて靴を脱がせてくれた。
「あの、すいません…」
「いえ!そいつのせいですから!失礼します」
「え?ワワッ!!」
靴を脱がせると今度は姫抱きされ、瓜は落ちないように今度は腕の中に収まった。