の花の名前は 3









そう言うと獄寺は、ニカッと全開で笑った。綱吉は、はちみつ色の瞳をぱちくりとさせて、こちらも顔中に笑みを広げていく。新鮮な驚きに、心が弾むようだった。

「え〜〜、そうなんだ!!すごい、ムリヤリだね〜」
「えぇ、俺も最初、そう思いました!」

 図鑑だかネットだかで調べた時、思わず「なんだそりゃあ!?」とツッコんでしまったという。“満天星”でドウダンツツジと読ませるなんて、無理矢理にもほどがある、と。けれど―――

「でも、あなたとこうして眺めてると、確かに“満天星”だなって思います」

 そう、穏やかに微笑んで獄寺も、花をつついてみた。枝中に、鳴りそうなくらいにいっぱいの花をつけたドウダンツツジは、なるほど、満天を埋め尽くす星のようでもある。
 目に見える星が、宇宙の総てではもちろんない。人間の目には見えないほどに遠く離れた星々で、宇宙は埋め尽くされているのだと、連想させるようなこの花は、本当に“満天星”の名に相応しい。
 同じ花を、綱吉ももう一度つついて、にっこり笑った。

「うん。オレも、そう思うよ!」

 ドウダンツツジは“満天星”。きっと忘れることはないと、綱吉はしっかり頷いてみせる。

「‥‥いつか、満天の星を見に行きませんか」
「わあ、いいねぇ!」

 “満天星”を見ていたらふたりは、どうしてもそんなような気持ちになったから。生け垣のドウダンツツジに別れを告げて、綱吉と獄寺はあれこれ話しながら、家路をたどる。
 新しい約束をするふたりの後ろで、ドウダンツツジの花が風に吹かれた。夜空の星が、風の揺らぎに瞬くようだった。




end.


next、お礼&感想


ー03ー

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