の花の名前は 2









春も盛りを過ぎる頃、街中では公園の植え込みや駅のロータリー、民家の生け垣などに白い花が目立つようになる。常の季節には、そんな花が咲くことなど忘れてさえいるのだが、殊更それを責める風もなく、ころころと可愛い花を咲かせている。

「10代目、この花の名前をご存知ですか?」

 ふたりで歩く道すがら、獄寺はふと、そんなことを綱吉に問いかけた。綱吉は眉尻を下げ、ふるふるとかぶりを振る。

「そういや、よく見るけど知らないや。なんていうの?」
「ドウダンツツジというんスよ」

 獄寺が答えると綱吉は、へぇ、と感心した声を上げる。ツツジの名前を持つが、ちっともツツジらしくはないその花を、綱吉はつついてみる。
 通常、よく見るツツジの花は、五弁の花びらがラッパ状に開き、色も朱や黄色、紫や白などとりどりだ。しかしドウダンツツジという花はだいたい白一色で、形としてはむしろ、スズランに似ている。風に吹かれたら、本当に鳴りそうな風情だ。無数に咲く様も、まさしく鈴なり。ツツジの仲間とは、ちょっと容易には信じ難いが、確かにツツジ科の樹だ。獄寺は、さらに言った。

「10代目、ドウダンツツジって漢字だと、どう書くかご存知ですか?」

 この問いかけには綱吉は、ますます眉尻を下げて、ぶんぶんと首を振った。無理無理、と、手までぱたぱた振ってみせる。

「ムリ、全然わかんない!クイズ番組でちらっと見たことあるけどさ、すっごい難しい字だったよ、ツツジって!」

 ちなみに、『躑躅』と書く。骸や髑髏並に難解な字だ。しかし獄寺は、えへへ、と笑って、ドウダンツツジの字を綱吉に教えた。

「10代目、実はドウダンツツジは、“満天星”とも書くんスよ!」



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ー02ー

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