んな日にも 20
「沢田さん、とりあえず椅子へかけましょう、ね?」
言って身体を支えようと伸ばした俺の手は…
パシッ……
と、乾いた音と共に沢田さんへ触れることなく戻された。
いや、正確には沢田さんには触れた。俺の手を払ったのは沢田さんの手だったから。
「あっ…」
「…黒川」
「はいっ」
感の良いやつだから、不振な空気を察してこちらを見ないように、でも気にしてたんだろう。すぐにこっちへ来た。
「沢田さんの体調が悪いようなんだ、奥の控え室に案内を頼む」
「…はい。さ、こちらへどうぞ?」
「え?…あ、あの…」
「大丈夫ですよ?今ディーノさんに連絡しますから。迎えに来てもらいましょうね?」
「そんなっ…ごめんなさい、俺大丈夫です!1人で帰れますからっ!」
「駄目です」
「でも…」
「…心配くらい…させてもらえませんか?」
「あっ…」
「沢田さん、本当に顔色が悪いんですよ?私もディーノさんに来てもらった方が良いと思います」
「…あの…はい。すみません…」
努めて優しい表情と声で…対応出来たはず…だ。本来なら俺が抱えて連れて行きたいくらいだったが、あぁも拒否られては…。
俺が触れる事は平気だと言っていたのに…俺が何かしてしまったのか…たんに体調が悪い時には触られたくなかったのか…。
いや、いまはそんな事を考えている場合じゃねぇ。ディーノに電話しねぇと。
その後は連絡を受けたディーノがすっ飛んで来て沢田さんを車で連れて帰った。
電話で聞いた限り沢田さんが今までこうゆう風になった事は無く、持病も無いそうだ。
本当にただ気分が悪くなってしまっただけならいいんだが…
昨日ボンゴレに来て家まで送ってくれたディーノさんは、俯き何も言えなくなってしまっていた俺を察して何も聞かずにいてくれた。
…獄寺さんは…俺が手を払った後一度も俺と目を合わせてくれなかった。
いや、ずっと俯いてたのは俺だったんだけど…俺を見ないようにしていた気がする。
嫌われて当然だよな…
何で俺はあんな風になってしまったんだろう。
何であんな事をしてしまったんだろう。
帰ってからもずっと考えたけど…分かるようで分からない。まるでチビ達が自分のオモチャを取られて癇癪を起こした時みたいだ。高校生にもなって何やってんだ、俺。