んな日にも 12
仕事は学校に影響が出ないように週3回、閉園まで子供達の相手をすることと時々、土日にお遊技なんかで使う物を作る手伝いに行くこと。
週3回弟の迎えも兼ねているから母親からはすんなりとOKが出た。
職員室のドアをノックして中に入る。
「失礼しま〜す」
「来たか、沢田くん」
「はい、ランチアさん」
「これなんだが、先月の給料だ。バイトは君だけだから手渡しで遅くなって悪かったな」
「え!?わぁ、ありがとうございます!!」
初めてのバイト代だ!今日貰えるとは思って無かったや。可愛らしいピンクのうさぎの封筒…嬉くって中を覗きそうになったけど我慢、我慢。
「いや、こっちも助かってるよ。子供達も懐いていて楽しそうで良かった。これからもよろしくな!」
「はい!ありがとうございます!!」
「あと、これ。作るのが遅くなってしまって悪かったんだが、君の分も作ったからな」
「わっ…ライオンだ。ありがとうございます!!今日帰ったらつけますね!」
貰ったのは「ツナヨシ」と刺繍のされたライオンのアップリケ。
普通、高校男児が貰って喜ぶものではないだろうけど俺は嬉しい。だって、ここで働いている先生のエプロンにはそれぞれ名前の入ったアップリケが着いている。それは園長先生が手作りでくれたものだと聞いたことがあったからだ。
園長のランチアさんはちょっと…いやだいぶ?見た目が強面。だけど凄く優しくて、園児からも先生達からも好かれている。
なんとなく、園長先生に認められて、他の先生達に近づけたみたいで嬉しかった。
給料とアップリケをカバンにしまい、エプロンをつけて子供達の所へ行くと、待ってましたとばかりに飛びつかれる。
園児と言えど遠慮がないからパワーがハンパない。
暗くなると室内へ移動。ひとしきり遊んで疲れて寝てしまう子や、静かにぬりえなどをする子の相手をしているとお迎えが来て1人、また1人と帰って行く。
みんなを見送ると、俺も寝てしまったフゥ太を抱えて帰路に着く。園で散々遊ぶから家ではご飯を食べて風呂に入れればあっとゆう間に寝てくれる。この点でも俺のバイトは家族に喜ばれていた。