の香り 5
「…ほんと、お見苦しいところを…」
「やめてったら、全然気にしてないからさ」
綱吉を送り届けるために獄寺も一緒に沢田家へ向かっている頃、ようやく獄寺は自分の行動を恥じていた。そして、もうすぐ家に着くとゆう所までそのやりとりばかりしていたが、獄寺がふと立ち止まる。
「…あの、じゃあ最後にもう1つ我が儘…聞いていただけませんか?」
スイッチが入っていない状態での獄寺からの我が儘なんてとてもレアな為、綱吉はすぐに頷く。
了承を得た獄寺は通りかかった公園へ綱吉を促し、ベンチへ2人で腰掛けるとポケットから小さな箱を取り出し綱吉に差し出した。
その箱をキョトンと見る綱吉だが、この流れで受け取らないのも変だと思い受け取る。
「これ、何?」
「これは…俺が十代目のイメージで選んだパルファムです。」
「え!?そっ…「受け取られるのが嫌なのはわかってるんです!どーしても嫌なら捨てちまって下さい!…けど、アトマイザーを買いに行った時に見つけて、どーしても貴方を思っちまって…」
彼は常に十代目のために!と息まくが、嬉しい反面対等じゃない。と綱吉はもどかしさを感じる。
まして物を一方的にもらうなど中学生の自分達には不釣り合いな行為だ。
しかし、彼の好意が分からないわけではないので歯痒い。
きっと昨日から渡すかどうするかを悩んでここまで来てしまったのであろう。こんな事で言い合いなどしたくない。この場合は押し問答せずに素直に受け取るべきなんだろうと思い、手の中の箱を一度見てから獄寺を真っ直ぐに見つめてありがとうと言う。
もっと拒否されると覚悟していた獄寺は安心したように肩の力を抜いた。
「少し、つけてもらえませんか?」
「ん、……あ、柔らかい…ちょっと甘い香りだね」
「はい、やっぱり…貴方によく似合う…」
「だけど…これを受け取ることが君の我が儘を聞くって事なら、俺の我が儘も聞いてくれる?」