の香り 3
「十代目、終わりました!」
「うん、ありがとう。ね、つけ方教えてくれる?」
家じゃつける人いないから、ほんと全然知らなくて。と照れ笑いする綱吉にテーブルを片付けていた獄寺は向き直り、もちろんです。とニッコリ微笑む。
「匂いってやつは、温度が高いと香るものですから、体の中でも体温の高い所、脈うつ所が良いです。」
「へ〜」
「香りの濃い物は空中に噴射させたのをくぐる程度でも1日保ちます。後のは、大抵は出かける前につけるでしょうから、手首につけたものを耳の後ろとうなじにつけられるのがよろしいかと。」
なるほどね、と相づちを打っていた綱吉だか屋上の出来事を思い出して疑問を口にする。
「でも獄寺君、俺にひじ向けてなかった?」
「あぁ、はい。ひじの内側もつけるポイントの一つなんで。俺、手首にはつけないんすよ、だから。」
何で?と問えば獄寺は腕を綱吉に向けて伸ばす。
「俺、アクセをつけるじゃないっすか?で、レザー系のブレスとかをしてるとレザーの匂いとパルファムの匂いが混じっちまって変な匂いになるんで…だから首とひじと、」
胸につけるんです。と言いながら伸ばした腕で綱吉の肩を抱き、自分の胸へポスンっと納める。
綱吉は前のめりに引き寄せられたために、抵抗する事も出来ずにそのまま獄寺の胸にしがみつく形になった。
「ごっ獄寺君っ…」
離して!と続くはずの言葉が出ない。ふわりと香った大好きな獄寺の香りが綱吉の脳を、感覚を、痺れさせる。
「むっ、胸もさっき言ってなかった!」
こんなにくっついてたら心臓バクバクいってるのがバレちゃうよー!
プチパニックになりながら獄寺の胸をペシペシ叩く。
そんな可愛い抵抗が愛おし過ぎて、肩を抱く力が無意識に強まる。
そうすると、可愛い人の可愛い耳が近づいてきたので唇を寄せ、
「胸は、俺があなたを抱きしめたいからつけるんです。だから十代目はつける必要ないです。それとも、誰か惑わせたい奴でもいるんすか?」
そんな奴は果たしますけど。と囁きながら耳に唇を押し付ける。