ツナツナパニック★ 6










獄寺は綱吉の不安を感じ取りハッっとする。
確かにこれではいたずらに彼の不安を煽っただけとも言える。

「もっ申し訳ありません!十代目のお心も考えずに俺はっ!(十代目が何の不安も感じ無いように、俺が影で相手を果たしてりゃー良い話だってのに…!!)」
勢いよく椅子から立ち上がり『ゴッ』と床に鈍い音を立てて土下座を始める獄寺。


「獄寺君やめて!!せっかく怪我が酷くなかったのに…あぁ、ほら。また赤くなってる」
もちろんそんな事を望んでいない綱吉は獄寺の前に一緒に跪き顔を上げさせる。




「…ねぇ、獄寺君…今君が何を考えてるか、何となく分かるよ。これからは自分1人で何とかしよう。って思ってない?」


「…はい。」


「…ありがとう。君が俺のことを本当に大切にしてくれてるって実感出来る。でもね、実際にやられても嬉しくないよ?」


今にも泣きそうな顔をする獄寺の肩に綱吉は顔を埋めて囁くように話す。


「俺は、君が思うよりずっと君が好き。何を考えてるか分かるようになるくらいね。そのくらい好きなんだよ。」


獄寺の瞳からポロッと雫が落ちて綱吉のベストに吸い込まれる。


「そんな君が、俺の為に何かをしてくれたのを知らなかったり、ましてや怪我をしてたらって想像したら怖いんだ。誰かに狙われる事よりもずっと怖い。」


綱吉は獄寺の背中に腕を回してしがみつく。


「だから獄寺君。もし、本当にもしも何かある時にはさ、一緒に乗り越えて欲しいんだ。君が居てくれるなら、俺は頑張れるから。」


「駄目かな?」
と、顔を上げて獄寺を見つめながら小首を傾げる綱吉に獄寺は

(あぁ、俺はこの人に一生何もかも勝てないな。)
と静かに微笑み、流れる泪越しに綱吉を見つめる。



ハッキリと返事は…出来ない。



きっと…彼に知られないように、その手を汚す日が来るだろう。
そこに迷いはない。

ここで綱吉の求める答えを言ってしまっては嘘をつくことになる。
綱吉に嘘をつかない。と誓うことも出来ないだろう。彼を守るために彼自身に嘘を言う日が来るかもしれい。
でも、極力嘘なんてつきたくはない。



獄寺は微笑むだけで返事はしない。それが彼の優しさであり、真実だと綱吉は思う。



…綱吉だってそうだ。
獄寺だけじゃなく、大切な人の為なら自分が犠牲になる。それを綱吉自身が分かっているからこれ以上答えを求めて来ない。それを獄寺は分かっている。





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ー06ー

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