さな夕日 4
「あ、ほらランボ、イーピン、風船配ってるよ。フゥ太も欲しい?」
弟妹のように共に暮らす子供たちに、話しかけるやわらかな声色。獄寺が、着ぐるみを通してでも聞き違うはずがなかった。
(10代目‥‥!お使いにでも来られたのか‥‥‥)
おそらくは、奈々に何事か頼まれ、陽気に誘われてちびたちがついて来たのだ。ちびたちは綱吉の手をほどき、うさぎさんに寄ってきた。
「フーセンフーセン、フーセンよこせ!ランボさん、みどり欲しい!」
「イーピン、赤イノ!」
せがまれてうさぎさんは、ハッとなって役割を思い出した。よく見知ったちびたちは風船を渡すと、ランボははしゃいで駆け出し、イーピンはペコリと頭を下げ、フゥ太もありがとう、とおっとりした笑みを見せた。
「よかったなー、みんな」
ちびたちがご機嫌なのを喜んだ綱吉の前にも、すっとうさぎさんの手が差し出された。握られているのは、オレンジの風船―――
「‥‥‥‥え、えっ!?オレにも!?」
数秒ほど、ぽかん、としていた綱吉だが、うさぎさんの意図に気付くと驚いた様子を見せた。中学生にもなって風船を貰おうとは思ってなかったが、うさぎさんはこくこくと頷いている。しばし呆然とする綱吉だったが、ふ、と表情をやわらげると、うさぎさんの手から風船を受け取った。
「―――ありがとう!」
にっこり笑った綱吉に、うさぎさんの内部はいっそう熱が篭る。手を振って去っていく沢田家一行に、ぶんぶん手を振り返すうさぎさんは、ちびっこたちに早く風船を寄越せとたかられているのだが、だいぶ満足だった。戻ってきたくまさんが、ちょっと引くくらいのテンションだった。
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