めるもの 6
暫くお互いの存在を確認するように静かに抱き合っていたが、獄寺の胸へ頬をすり寄せていた綱吉がぽつり、ぽつりと話し始める。
「…夢で、君がよんでる声がしたんだ」
「はい」
「君のぬくもりも感じた」
「はい」
「本物の君がいてくれたら。って…俺、馬鹿みたいに泣いた…」
「…はい」
「それで…目が覚めたら君がいたから…すごく、嬉しかった。今も、君に背中をさすってもらえるだけでこんなにも身体が楽になる。ありがとう」
「…はい」
「ふっ…さっきから“はい”しか言ってないよ?」
「…綱吉さん」
「いいね、それ。もっとよんで?隼人」
お互いの温もりを感じながら相手の名前をよべる甘い甘い幸せな時間。
獄寺は綱吉をしっかりと抱きしめながら囁く。
「今日…いいえ。今日まで、それから、これからもあなたに逢えることを幸せに思います」
「どうしたの、急に…」
「いつだってあなたに逢いたいと思ってます。でも今日はもっと特別に感じました。今日逢わなければいけないと。あなたの目を見て言わなければと」
「何を?」
「誕生日、おめでとうございます」
「あっ、今日だったんだ…そっか」
綱吉はそこではじめて自分の誕生日だと気づいた。
そして,心が弱くなっていたのも無意識に獄寺を強く求めていたのもそのせいだったかもしれないと思う。
「こうゆう生業ですから、甘ったれたこと言ってられないっすけど…やっぱり、産まれた日の近くに命が危険にさらされるなんて…。俺はそれを見てるだけで、何も出来やしなくて…。でも今日、こうして逢うことが出来て良かった。ありがとうございます」
綱吉は、獄寺がお礼を言うのは変だし、誕生日ってだけで。と口についてしまいそうになったが、獄寺が本当に、本当に悲痛な顔で俯いてしまうから、綱吉はもし逆の立場だったらと想像した瞬間、たまらなく不安になった。
こんな気持ちを彼は何日も抱き続けた。
だから夢にまで来てくれたんじゃないのか?夢で、自分も彼を強く求めた。
互いに、互いを求めた。
それが出来る存在の何て大切さ。
綱吉は俯く獄寺の頬に手を添えて口づけながら囁いた。
「ありがとう」
End