めるもの 5












綱吉の背中をさすっていた獄寺は、綱吉が寝ながらも泣いていることに気付き、もしかしたら自分が背中を触っていることが眠りを妨げるばかりか、苦しみをあたえているのではないかと思い、手を離した。

すると綱吉は寝返りをうちながら獄寺へと手を伸ばしてくる。
獄寺は一瞬躊躇ったが、何かを探すようにのばされるその手を見ていられずに、掴んだ。
掴んだ手はピクリと動いたが、どうにか安心して欲しくて、届かないと分かっていても綱吉の名前をよんだ。


「綱吉さん…」


普段はよばない名前。
プライベートではよんで欲しいと言われるが、すぐに戻ってしまう。
よびたくないわけではないが、獄寺の性分が邪魔をしていた。

しかし、今は目の前の綱吉の症状からか、一度名前をよぶと、まるで壊れた玩具のように何度も何度も名前をよばずにはいられなかった。

寝息をたてる綱吉の涙の量は増えたが、掴んだ手が、獄寺の手を離すまいと弱々しいながらも必死に握り返してくることを都合良くとらえ離さずに、空いている方の手では涙を拭った。

そして濡れた頬やまぶたにキスをおとしてゆくと、ゆっくり綱吉の目が開かれた。
焦点が合わないのか、まだ涙でいっぱいな虚ろな目は獄寺とその後ろの天井を交互に見やり、最後に獄寺の目を捕らえるとゆっくりと微笑みながら溜まっていた涙の雫をまた静かに零した。


「…は、やと…なか…ないで…」


かすれた声で名前をよばれた獄寺は自分でも気づかぬうちに泣いていたようだ。
綱吉は獄寺に手伝ってもらいながら軋む身体を起こし、ベッドに座る獄寺へと抱きついた。
もちろん獄寺はその身体をいたわるように抱きしめ返し、背中をさする。


「…も、部屋…いいの?」

「えぇ、ウイルスの危険性は無くなったそうです。だから、あとはあなたの体力が回復すれば大丈夫です」

「そっか…コホッコホッ…」

「無理なさらないで下さい。まだ横になっていた方が…」

「嫌だ。君と離れたくない。触れていて欲しいんだ」


ベッドへ寝かそうとする獄寺に綱吉は弱々しくもしがみつくように抵抗した。
そんな可愛いことをされては獄寺が太刀打ちできるわけもなく、最大限綱吉に負担のかからない大勢で抱きしめ返した。








ー05ー

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