んな日にも2-11
「約束っつーか、土曜は泊まりに来るから…(けど、最終的に沢田さんはどこかで使われる俺の写真を見付けるだろうし…)」
「泊まり?あなた、だいたい土日は仕事でしょ?」
「あぁ、鍵を渡してあるから出入りは自由に…(第一、夜から明け方に仕事って一般的におかしいだろ?良くて接待を仕事と言ってるようにしか聞こえなくて、それでも怪しすぎる…)」
「鍵?鍵って家の鍵!?」
「何だようるせぇな!さっきからそぅ言って…あ…」
考えをいちいち中断されることにイラついてパッっと顔を上げると、驚ききった顔の3人(約一名は分かりにくいが、片眉がやや上がっている)がいた。
やってしまった…。
沢田さんの事ばかり考えていて意識しないうちに余計な事を喋っちまった。
沢田さんが恋人であることなんて渋谷のスクランブル交差点だろうが、世界の中心だろうが何処でも叫んでやる。
むしろ叫びたい。
けど、沢田さんに万が一何かあってはいけない。
人の思考なんてその人間数だけあって、言葉や視線は時に酷い傷をつける。
やたらに言うことはしないと決めたのに、どうする…
「隼人、その子を撮影場に連れてきなさい」
「は!?なんでそんなことっ」
「あなたがそんな風にする子なんて初めてじゃない。姉としてね。」
「何が姉としてなんだよ!?連れてくわけねーだろ!!」
「いいじゃねーか、連れて来いよ」
「んなっ!リボーンさんまで!」
まじでどーする!?リボーンさんが言いだしたら断るのは至難の技だぞ…。
いや、落ち着け。流されずに落ち着いて良く考えろ。
「あの俺、鍵を渡してるくらいですから、連れてきたら仕事に支障が出ると思うんすよね」
努めて冷静に真っ直ぐリボーンさんを見据えて言うと、また片眉をピクリとさせた。
逃げに入っていることがバレてるのは百も承知だが、やはりこの人のプロ意識を突く線なら何とかなりそうだと踏み、言葉を続ける。
「もし、今回の仕事に関係無い人を中に入れて良いと言うなら、別の人がいるんですが」
「…どうゆうことだ?」
「知り合いの男子高校生なんですけど、今度俺の作ってるDMのモデルやってもらおうと思って2人に一度紹介したかったんで、その機会になるかと」
モデルとして彼を使うなら、勿論この2人の許可も必要で、写真で済まそうと思っていたが、良い機会かもしれない。
それにボンゴレ好きな沢田さんだ、きっと話したら見に行きたいと言ってくれるはず。
一緒に来てもらえれば変な疑いも無く、休みも素直に喜んでもらえそうだから一石二鳥だ。
「一般人でボンゴレ向きでは正直無いんですが、顔を出すつもりは無く、雰囲気として良い写真になりそうなんで」
「…確かにボンゴレの撮影に、連れなら見ず知らずでも入れる。なんて噂にでもなられたら困るしな」
「まぁ!リボーンったら、もしかしたら私の妹になるかも知れないんだから見ず知らずじゃないわよ?」
「ブッ!!なっ何言ってやがる!!飛躍し過ぎだっ!!(やっべー、今ウエディングドレス姿の沢田さん想像しちまったじゃねーか!///)」
「落ち着けビヤンキ。こいつの女はいつでも見れるからまぁいい。それよりこいつが選んだその男子高校生とやらに逢ってみないといけねーぞ」
「そ、そうね。ボンゴレのモデルやらせるからには…リボーンの言うとおりね」
「じゃあ、当日はその彼を連れて行きますんで」
「あぁ」
「分かったわ」
この時の俺は、沢田さんを思っているふりをしてやっぱり自分の都合の良いようにしていただけだと後で後悔するとも知らず、自分の名案に2人が乗ったことに内心ガッツポーズをしていた。