思わず獄寺さんの手の平に乗せてる手をキュッと握る。
お客さんじゃなくて


俺を見てほしくて…


気付いた獄寺さんがパッと俺を見たけど、俺は顔をそらしてしまった。
自分への嫌悪感でイライラして顔をしかめてしまう。


「沢田…さん?」

「………………」

「やっぱり嫌でしたか?…やめましょうか…」


俺が急に不機嫌になったのに獄寺さんは申し訳なさそうに言って俺の手を離そうとした。その手を更に強く握る。どうしよう…こんな自分勝手な気持ちを言うわけにいかないけど、うまくかわす術なんて俺が持ってるはずもない。


「…沢田さん、今…何を考えてます?」

「…………………」

「じゃあ、誰のこと、考えてます?」


1つ目の質問には答えられずに俯いたままだけど、2つ目の質問にパッと顔を上げて獄寺さんを見る。
すると獄寺さんがニッコリ笑って
「俺のことですか?」
と聞いたから、コクリと頷いた。


「それならいいです。俺、独占欲丸出しなんであなたが誰かの事を考えてそんな表情するなんて堪えられないんすよ。俺になら悪意でも…殺意でもかまいませんから…」

「そんな事っ…!」

「まぁ、あなたにそんな顔させちまった自分には、すげぇムカつきますけど…」


獄寺さんは握っている俺の手の甲を親指でスリスリとさする。
…違う違う!獄寺さんは何も悪くないのに!
言わなきゃっ…ちゃんと…


「違うんです…俺…多分、嫉妬したんです」

「嫉妬…?」

「仕事だって分かってても、やっぱり獄寺さんが誰かの手をこうして握って…優しくさわるんだなって。その人の事を一生懸命考えて色を選ぶんだなって…思ったら…」

「沢田さん…」

「それに、こんなに手際よくやってるってことは、俺にやる前に別の誰かにやってたんだなって…。あはは、ごめんなさい。俺、何言っちゃってるんですかね…?」


獄寺さんの顔を見る事は出来ずに握られている手ばかりを見る。
獄寺さんは何も言ってくれない。
呆れられたかな、当たり前か…







ー03ー

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