んな日にも 41
「すみません沢田さん」
「…っ!!」
言って目の前の人を抱きしめると、彼は腕の中でもがき、とっさに距離を作ろうと俺の間に入れた両腕で胸を叩く。
けれど、もがけばもがくほど俺は腕の力を強くする。これはさっき押し倒したような理性の欠けた行動ではない。
「離せ!何で嫌いなのにこんな事!」
「…嫌い?」
「今…"すみません"って!……もっ…や…ヒック…」
俺としては、沢田さんが気にしていた事や、こうして抱きしめる事への"すみません"だったが、沢田さんは告白の答えと捉えられてしまったようだ。泣く沢田さんは可愛そうなほど必死に俺から離れようとするので、何カ所か引っかかれもした。…だけど
「駄目ですよ沢田さん」
「な、にが…」
「泣いたって駄目ですよ。もがいたって、叩いたって。俺はあなたを離しません」
「なに、言って…」
沢田さんの動きが鈍くなったのを見計らって正面から抱きしめていた体制を変え、沢田さんを膝の上へ横向きに座らせ、片手は肩に回し、片手は細い腰を支えて上から被さるように首筋へ顔を埋めた。
「獄寺さん、何を…」
ますます訳が分からないといった様子の沢田さんの腕が、行き場を無くし空をさ迷っているのを感じて俺の身体へ回すように誘導すると、抵抗は諦めたのか背中へ回した手で俺の服をキュッっと掴んだ。
「ふっ、可愛い」
そんな仕草に思わず呟くと、握ったままの服を引っ張られた。そんな抗議も可愛くて、俺は可愛い、可愛いと連呼しながら身体を揺りかごのように揺らし、沢田さんをギュウギュウ抱きしめた。
「はぁ。…何なんですか?いったい」
暫くされるがままになっていた沢田さんがため息混じりに呟く。
俺は少し、ほんの少しだけ抱きしめる強さを弱めて囁くように話しかけた。
「もぅ、怒ってませんか?」
「は?」
「俺、怒ったあなたより、可愛いあなたが好きです」
「獄寺さん…さっきの話を流すなら俺、また怒りますよ?怒ってないけど許しては無いですから」
「えぇ、流しません。逃げずに、ゆっくり話を聞いて欲しかったんです」
「…分かりました。じゃあ逃げないんで離して下さい」
「駄目です。言ったじゃないですか、離さないって。それに…あなたが傷つけるのは俺だけにして下さい。俺ならいくらでも引っ掻いて良いですから、ご自身を傷付けないで下さい。」
「…ごめん、なさい」