んな日にも 40












"こんな事"とは、押し倒した事だろう。つまり、好きでもない相手を押し倒したりするのか。って事…だよな?


「沢田さん…それ…言ってる意味分かってますか?」

「…………………」


沈黙が痛い。やはり俺の勘違いなのか…


カリッ…カリッ……

また引っ掻く音がする。今度はフローリングの床か?けど瓜の奴は普段この部屋では…まさか沢田さん!?そんな事をするほど不安定にしてしまったのか!?



ガチャッ!!



止めさせようと思わずドアを開く。すると床にへたり込んだ沢田さんがいて、見下ろす俺からは細い首筋しか見えない。


カリッ…


ドアが開いた瞬間にビクリッと身体を揺らし、下を向いたままフローリングの床を引っ掻いたのはやはり沢田さんだった。爪は長くなかったはずだから、下手したら怪我をする。


「沢田さん、そんな事したら指がっ」
しゃがみ込み沢田さんの手を床から引き離す。見るとまだ血は出ていないが指先が赤くなり痛々しい。両手で手を包みこもうとしたところでバッっと腕を払われた。



「さわ…」

「だから、どーしてそんなに優しくするんですか!?」

「っ!!」


キッ!と顔を上げた沢田さんの瞳には涙が溜まっていたけれど、どこか力強い眼差しに一瞬気後れすると、沢田さんは俺の言葉を待たずに叫んだ。






「俺!獄寺さんが好きなんです!!」






「…………………」


「…好きだから…驚いて怖かったけど、あんな事されても本気で嫌だったわけじゃなかったんだ。だけどあなたは笑った。冷めた笑いだった。からかわれてる事にも気付かない馬鹿なガキだと、笑われてる気がしてショックだった。でも、部屋を出る時のあなたの顔は後悔してるような、辛そうな顔をしてた。何でですか?何であなたがあんな顔…ほんと、わけ…分かんなくて、グチャグチャ……」




まくし立てるように一気に話すと、沢田さんの瞳から、堪えていた涙が零れ落ちた。


あぁ、もう…無理だ。










ー40-



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