んな日にも 38
「つまり、この前みたいに気分が悪くなったのを瓜は心配しただけだから瓜を怒るなと…?」
「ぅ、うん…」
「そぅ、ですか…(何かひっかかる。けど無理に追求出来るお顔じゃねぇな)俺が変なこと言ったんで、混乱させちまったかと」
「…っ!!あ、そっそんなことは…」
…あぁ、俺のせいか。確かに沢田さんの中に波紋を作りたくてワザとあんな事言ったけど、こんなに混乱するとは…この人は俺の思ってる以上に色々敏感なのかもしれない。
「沢田さん、少し横になった方が楽かもしれませんから、失礼しますね」
言って沢田さんを姫抱きして立ち上がる。
沢田さんは驚いて少し暴れたが、直ぐに諦めて大人しくしてくれたのでそのまま寝室のベッドへ連れて行く。
「沢田さん、おろしますから手を…」
無意識だろう、落ちないように俯きながらも俺の腕を可愛らしく握っていて、もちろん離して欲しくはないがベッドに寝かせる為に言うと、握る強さが強まり俯いたまま頭を俺の胸にグリグリ押し付けてきた。
「さっ沢田さん!!?」
「………………………」
沢田さんが離れてくれない。
ここは寝室。
ベッドの横。
腕の中には小悪魔な最愛の人。
「…はぁ」
自分を落ち着かせようと無意識にため息をつくと、沢田さんがビクッと肩を揺らしてそっと顔をこちらに向けた。
濡れた瞳に不安げに下げられた眉。
頬は赤く染まり、薄く開く唇。
バフンッ!!
「…え…?」
沢田さんの瞳がこぼれそうなほど開き、俺の顔と…自分の顔の横にある俺に掴まれた手を交互に見る。
分かってる。分かってる。こんなことをしては駄目だ!早く手を離して起き上がらなきゃいけねぇ…けど、頭と体が真っ二つだ。
「獄寺さん!?何?離して下さいっ!!」
沢田さんは手や体を捻って俺を退かそうとするが、体格差に加えて真上から抑えてる俺には何の抵抗にもならない。
逃げようとするものを抑えつけたくなるのは男の本能か…最悪だ。結局俺もそこら辺にいる男どもと何も変わんねぇ。
こんな事をしているのに、何処か冷静な自分がいる。そいつが沢田さんの手が微かに震えている事を知らせた。こいつが理性ってやつならもっとまともに働きやがれ。
…ほんと、何やってんだか。自分の気持ち悪さに何故だか可笑しくなり口元が歪んむ。
その瞬間沢田さんの瞳から雫が零れ落ち、俺の枕へ吸い込まれていくのをまるでスローモーションのように見た。