んな日にも 36












「あああああのっ!獄寺さん!」

「はい」

「自分で歩けるからおろして下さい!」


姫抱きされたままズンズン奥へ進む。


「…俺といる時は、姫になってくれませんか?」

「は…?(さっきの続きにしては…なんでこんな真剣に言うんだろ…)」


いきなりの言葉に思考が止まる。
入ったリビングのテレビの前にあるソファーへ俺をとても、とても大事そうに降ろして獄寺さんは俺の前のラグに跪き、俺の両手を握る。
いつも見上げてる獄寺さんを見下ろす。少し不思議な感じだ。瓜は俺の太ももの上で丸くなってしまった。獄寺さんは俯きながら…多分俺の手を見ながら話し始める。


「俺、あなたのことがほんと大事なんすよ。だから、必要以上に心配で世話やきたくなるんです。好きでやってることなんで気にしないで下さい。って言っても沢田さんは気にするでしょ?だから、俺のことはその王子でも、執事とでも思って、沢田さんは俺にとっての姫的な存在になってくれませんか?」

「…世話をやかれるのが当たり前になるって事ですか?」

「はい…」

「…ずっと気になってたんですが…何で…俺にそこまで?」

「………あなたのことが…愛おしいからですよ。最初にあった時から可愛らしくて!」


獄寺さんはパッと顔を上げていつもの優しい笑顔で俺の頭をクシャっと撫で
「飲み物持ってきますね」
と言って立ち上がった。


…俺は顔をあげられない。
「何ですかそれ〜!」
とか、言えば良かったのかな…?
でも、俺…今、別の答えを期待した。


愛おしい?可愛らしい?何それ…分からない。からかわれた?俺がガキだから…俺だけだとよく言うけど、本当にそうなのか?だっていつも慣れた感じで…


別の答え…俺がガキじゃなかったら…男じゃなかったら…言ってもらえてた?

でも、言われたら…俺はどうしただろう…。
自分で兄が出来たみたいだと言ったけど、きっとこの思いは違う。さっき、そんな気がした。


けど、獄寺さんが俺を弟のように可愛がってくれてるから“兄”だと感じたんじゃないのか?それを俺は勘違いして変に期待したりして、自分が馬鹿みたいだ。



山本と骸の言葉が頭に響く。2人は…俺が勘違いしてることに気付いてて忠告してくれてたんだろうか?浮かれていた俺は友達の言葉に耳をかさなかった。その罰がこれだろうか…。










ー36ー



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