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 私は誇り高き魔獣である。
 7人兄弟の長男に生まれ、家族を支えながら今まで立派に生きてきた。
 しかし、それが今なぜこうなっているのか…?

「わんちゃあん、ほらぁおいでぇ〜、美味しいビーフジャーキーですよぉ〜」
「……いらん!」

 私の目の前にいる男は厭らしい笑みを浮かべながら、ビーフジャーキーとやらを私の口元に持ってくる。
 私はそれを首をふって拒否をする。

「むぅぅ、いらないのぉ?」
「私はそんなもの食べない!」
「そおぉ? 美味しいよぉ〜、ほうら良い匂いでしょ?」

 男はビーフジャーキーを私の口元にグリグリと押し付ける。と、香ばしい良い薫りがして。

「わん!」

 ついぱくりと食べてしまったのである。
 しかもそれではもの足りず、つい男の指までペロペロと舐めてしまった。
 は、と我に返った時には男はにんまりと笑っていて。

「うふふ〜! 美味しかった? わんこちゃん」

 してやられた、と私は悔しくなるのである。


******


 そもそも私がこんな目に合う羽目になったのは、可愛い末の弟のためであった。
 夜になっても巣に帰らない弟を探しに森に行くと、弟はあの魔族の男に連れ去られようとしていたのである。

「にいさま! 助けてぇ!」
「弟に何をするんだ!」

 私は男を倒そうと挑んだのだが、男はあっけなく私を倒した。

「弟よ……! お前だけでも逃げるんだ…!」

 私はせめて可愛い弟だけでも助けようと力を振り絞り、なんとか弟を逃げさせることに成功した。

「にいさま、にいさま! 必ず助けに行きます! 必ず!」

 男に捕まえられた私に弟は涙を流しながらそう叫んだ。
 そして私は男の住む城に連れてこられたのである。



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